■モトコレクション35号 モトコレクション
Triumph TT600

新生トライアンフは、伝統のブランド名を大切にしつつ、
独自の手法でその地位を確立してきた。
そしてさらに、3気筒エンジンばかりにすがらず新たなチャレンジも始めた。
4気筒エンジンを搭載するミドル・クラスのTT600は、
日本製モデルに正面から勝負をかけたスーパースポーツである。

■本文
 トライアンフといえば、100年以上の歴史を誇る英国の名門ブランドという形容句がついてまわる。しかし、現在の新生トライアンフ社は実際のところ、1991年に生産を開始した非常に若い二輪車メーカーなのである。オールド・トライアンフが生産した名車の名前を現在のモデルに冠したりもしているが、技術面でも経営面でも、すべてが「新生」であると理解すべきだ。
 とはいえ、そんな新生トライアンフも、生産開始から10年以上がすぎ、確固たるポジショニングを築いたと言えよう。そして、同社の生産するモーターサイクルに関して、スタイリングや乗り味に、多くのライダーがハッキリとしたイメージを抱くようになった。
 端的なところでは、3気筒エンジンである。創業時から4気筒モデルも販売してはいるが、3気筒エンジンのほうが個性的であると市場から評価され続けてきた。それに応えて、さらにはトライアンフ自身も確信を持って、3気筒モデルを熟成してきた。幅の狭さや軽量さ、独特の回転フィールやパワー特性に磨きをかけ、そのエンジンを活かす車体作りを行ってきた。そうしたモデル群の頂点に立つのが、スーパースポーツ車の955iである。
 そうして安定を築いた新生トライアンフが、次のステップを歩み始めている。市場において完全に認知された形式以外のモデルも作り始めたのだ。たとえば、2気筒エンジンを抱えた懐古的なスタイルのモデル、ボンネビルだ。2000年デビューのTT600も、従来のトライアンフが生産するモデルからはイメージできないものだ。
 TT600は、欧州で非常に人気の高い600ccクラスに投入されたモデルである。日本でいえば400ccクラスに相当する入門車クラスなのだ。日本の各メーカーからも、魅力的なモデルが次々と投入されている。加えて、スーパースポーツ世界選手権を頂点とするレースが、非常に人気がある。4気筒は600ccまで、2気筒は750ccまでの市販車をベースに、小規模な改造を施しただけのマシンで行われるロードレースであり、観る者にも参加する者にも身近さ感があるからだ。
 こうした背景から開発されたため、TT600は強い個性を主張することを出発点とはしていない。ヘッドライトや、その下方両側に位置するラムエア・ダクトの形状には、なるほどトライアンフらしいと思わせる雰囲気があるが、そのほかの機構的なものは、他の日本製ライバルたちと酷似している。真似たのではなく、純粋に性能などを追及した結果、結論が同じだったのだ。
 エンジンは、水冷4ストロークの直列横置き4気筒で、DOHCの4バルブである。ボア・ストロークは68×41.3mmと非常にショートストロークな設定で、圧縮比は12.5と高い。吸気系はインジェクション仕様で、点火時期はデジタル制御される。そしてフレームは、アルミ製のツインスパー形式。955iなどのように凝った形状のフレームではなく、アルミ押し出し材を使用したストレートなメイン・チューブが、アルミ鋳造製のステアリング・ヘッドとスイングアーム・ピボットまわりを連結する方式だ。このように、最新トレンドのメカニズムが満載されているのである。
 走らせてみると、TT600のエンジンが非常に扱いやすいパワー特性であることがわかる。110馬力のパワーは、日本製のライバル車が115馬力程度であるのと比較するとやや低く、フル加速すればやや差が付くかもしれない。そのかわり、低中速トルクが十分にあり、全回転域にわたってパワーのつながりもいい。普通のライダーが走らせる場合には、むしろこうした扱いやすさが速さにつながる可能性も大きいくらいだ。それに、その気になれば13000rpmという高回転まで吹け上がる痛快さも楽しめるのである。
 ライディング・ポジションも、極端にスパルタンなものではない。十分にスポーティーな気分を味わえるものではあるが、ハンドルは見た目のイメージほど低くはなく、上半身の前傾はさほど強くない。ハンドルとステップ、それにシートの位置関係もコンパクトにまとめられているから、ワインディング・ロードでハードな走りをするのに都合がいいばかりか、小柄なライダーにも乗りやすい。
 レースを意識していないわけではないが、初心者や一般的なライダーにも乗りやすいモデルなのである。ホンダやヤマハのトップ・モデルと比較し、このクラスで元々主流だった馴染みやすさ重視の乗り味なのだ。それは操縦性も同様で、特段に鋭く曲がり込む特性ではない代わりに、常にスムーズに安定してコーナリングする。もちろん、ミドル・クラスならではの軽快さも備える。特別なテクニックは不要だ。ブレーキも十分な制動力を備え、同時に急激に効いたりしない扱いやすい特性が与えられている。
 初期型では、スロットルレ・スポンスがやや鈍い部分があるなど、いくつかの問題もあったが、それはここに掲載している2002年モデルまで、年ごとに改良されてきた。そして、さらなる飛躍をもとめた2003年モデルも発表になっている。エンジンは細部に至るまで改良が加えられ、インジェクションもまったく新しいものになって、最高出力は2馬力アップした。また、フレームを刷新するなどで、乾燥車重は5kg軽い165kgとしている。カウリングのデザインも、2灯ヘッドライトの非常にシャープなものとなった。そして新型車は、名称も「デイトナ600」に変更される。
 他社との開発競争が非常に激しいこの600ccスーパースポーツのカテゴリーにおいて、トライアンフも積極的な活動を行っているのだ。そうした、日本製モデルと真っ向勝負するもの作りの出発点がTT600だったのである。
(以上本文終了)

●●●●●●●●●●キャプション類

●ハンドル
TT600のセパレート・ハンドルは、同じカテゴリーの日本車よりも心持ち高い位置に付けられている。着座位置から近いこともあり、上半身の前傾がわりと少ないので楽な姿勢で走れる。

●ブレーキ
フロントのφ310mmダブル・ディスクとリアのφ220mmシングル・ディスクの性能は十分に高い。またコントロール性にも優れているので、平均的なテクニックのライダーでも容易にその性能を引き出せる。

●フロントカウル
ヘッドライトなどフロント・マスクまわりには、日本車とは違った独特のデザインが施されている。その下方両サイドにある黒いものは、走行風圧を利用してエンジンの吸気を圧縮するラムエア・システムのダクト。

●タンデムシート
タンデム側のシートは座面が小さく、クッションの肉厚も少ないのであまり快適ではない。タンデムでのロング・ツーリングなどには向かないが、スーパースポーツ車としては標準的なものだ。

●ブレーキ
フロント・ブレーキのキャリパーは対向4ピストン型だ。正立型のフロントフォークは、スプリングのイニシャルと伸圧の減衰力それぞれを調整できるフル・アジャスタブルである。

●メーター
大型液晶部には速度計がデジタル表示されるほか、区間距離や累計距離、それに時計なども表示される。その横にアナログ式の大きなタコメーターが取り付けられている。

●カウル→フレームに変更!!!
フレームはアルミ製で、メイン・チューブに押し出し材を使用しており、構造的にはツインスパーである。もちろんスイングアームもアルミ製だ。

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DATA FILE

エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ4気筒
総排気量:599cc
ボア/ストローク:68mm x 41.3mm
圧縮比:12.5
最高出力:110ps/12750rpm
最大トルク:6.9kg-m/11000rpm
燃料供給方式:インジェクション
始動方式:セル
クラッチ:湿式多板
変速機:6速
後輪駆動方式:チェーン・ドライブ
フレーム形式:アルミ製ツインスパー
キャスター/トレール:24.6度/89.1mm
サスペンション:
 F 正立型テレスコピック・フォーク、φ43mm/ストローク120mm
 R アルミ製スイングアーム、リンク式モノショック、ストローク120mm
ブレーキ:
 F φ310mmダブル・ディスク、対向4ピストンキャリパー
 R φ220mmシングル・ディスク、片面1ピストンキャリパー
タイヤ:F 120/70ZR17、R 180/55ZR17
全長:2060mm
全幅:690mm
全高:1150mm
ホイールベース:1395mm
シート高:810mm
燃料タンク容量:18L
乾燥重量:170kg

(以上全文終了)