☆06年型ハーレー・ダイナシリーズ

 8月の最終週、ハーレーダビットソン・ジャパンは2006年モデルを一堂にそろえ、報道向け事前公開&試乗会を開催した。06年は5ファミリー/33機種のラインナップとなる。ダイナ系では2モデル、ソフテイル系/ツーリング系/水冷VRSC系においては各1モデルの新機種が投入されるが、上写真のダイナは新機種の1台である。
 各ファミリーの中でもダイナ系はとくに大幅な仕様変更が施された。1449ccのツインカム88エンジン(いわゆるビッグツインの系統)は全車インジェクション仕様となり、制御プログラムはユーロ3規制を見越したものに。駆動系は刷新され、ミッションを新構造の6段変速(従来のハーレー各車はすべて5速)とし、クラッチも構造変更を受けてレバー操作力を35%軽減した。そしてフレームは新設計。剛性を高めるとともに、前輪アライメントを見直している。フロントフォークやブレーキも強化された。
 新しい時代に対応するための仕様変更であり、同様の改良が今後、ソフテイル系など他の機種にも施されていくものと思われる。アメリカ人的感覚では最もスタンダードなバイクらしい構成をとるリヤ2本サスのダイナ系(挙動も一番普通っぽい)に、まずはこうした仕様を採用した、というところだろう。
 写真のFXDBIダイナ・ストリートボブに試乗した印象について。
 まずエンジンに関しては、低速レスポンスが若干低下している気がした。スナッチを起こすより少し上くらいの低い回転において、スロットルを急開したとき思うように加速へ移行しにくい。排ガス対策強化の影響であろう。とくに低回転でのドライブを楽しみたがる日本のハーレーファンには気になるところだが、これはどうやらショップレベルでの対応ができそうに思えた。高回転側は、ストレスなくスイスイ回ってくれる。そして根底部分では、底力感のある、骨っぽいが優しさや豊かさも備えた特有の回転フィールの美味しさがキッチリ継承されている。
 駆動系は非常にいい感じで、ビューエル同様にギヤシフトがかなり軽快に決まるようになり、クラッチも軽くなって、操作性が国産車に近い容易さとなった。ミッションの6速化は、アメリカの道路における実勢速度の上昇に対応したもので、今や彼の地ではごく一般的な70〜80mile/hでの巡航を快適にしている。トップギヤの減速比は従来の5速仕様のそれと同じで、1速はややローギヤード化され、その上でファイナルをロングにするといった内容で、結果的に全体がクロス化されつつトップがロングとなっている。まあ、日本の一般道ではせいぜい4速ギヤまでくらいしか使えないけれど。
 より速い速度での走行を快適にこなす仕様となっているのは車体も同じで、スタビリティが今まで以上のものに向上している。
 ストリートボブはシングルシートが標準のごくシンプルなモデルで、予想される市販価格は177万5000円。ハーレーとしてはかなり抑制された価格だ。あこがれのビッグツインをとりあえず手に入れる、という人に向いているとも言えるが、カスタム化のベース車としても適している。エイプハンガーと呼ばれる高いハンドルバーのライポジはかなり特徴的だし、ローダウン化されたリヤサスにより乗り心地はやや固いけれども、このあたりはハーレー、好みに合わせ、いかようにもパーツを変更できる。ちなみに、ストリートボブとエンジンやフレームが同じFXDI_35=ダイナ・スーパーグライド35周年記念モデル(全世界3500台限定で予想価格210万円)では、(ハーレーの)普通のライポジでシートも座り心地がよく自然な気分で走れた。ホワイトのボディカラーもなかなか洒落ている。
 さて。
 今どきのビッグツイン・ハーレー各車は160km/hくらいすぐ出て高速安定性に何の不安もなく、ブレーキも効く。インジェクション仕様のものは始動性が抜群でメンテナンスフリー。こうした進化は大いに歓迎するところだ。”クセがあるとか維持管理に特別なワザがいるとかが個性で魅力……”なんてことは絶対にないと思う。工業製品としての機能は優れているほうがいいに決まっている。06年型のダイナはその方向でちゃんと進化している。
 それはそれとして、我々がハーレーブランドに強く求めるものは、やはり古き良き時代的なアメリカの雰囲気であろう。日本人はそんな方向での嗜好性が強いと思う。僕もまったく日本人的であり、好きなモデルといえばFXSTDIデュース・インジェクションやFXSTBナイトトレインといったソフテイル系である。バランサー付きのツインカム88Bを、リヤサスのショックが車体下に配置されるフレームに対しソリッドマウント(リジッド結合)するそれらのモデルは、巨大なVツインの息吹を、アスファルトを蹴って進む感触を、とてもソリッドに味わえる。低振動でもソフトな乗り心地でもないが、ホンダでもヤマハでもスズキでもカワサキでもなく、ハーレーに乗る意味を堪能できるところが僕は好きなのだ。結局のところ、その魅力は車体の走行特性を含めた広い意味での「鼓動の堪能」ということになろうか。高速性能は、もちろんシッカリとしていたほうがいいけれども、現実的には140km/h以上などどうでもよく、日本において免許の残り点数など気にしないで済む速度域でタップリと愉しめることのほうがはるかに大切だ。
 おそらくアメリカ人はこれほど偏った見方はしておらず、もっと普通のバイクとして捉えているのだろう。が、それでも。彼らとしても、メイドインUSAであることの誇り以外に、鼓動という言葉は使わないまでもノスタルジックな鉄馬としての乗り味を大切にしている面があると思う。
 ところが、我々日本人が言うところの鼓動、鉄馬的感覚を強く醸し出すのは、これからの時代はけっこう大変な作業らしい。厳しさを増す排ガス&騒音規制への対応、高速化する交通事情への適合。これらの要求に応えつつ、鉄馬らしさも維持し続ける。そうしたハーレーの動向に今後も注目していきたい。