☆05年型ヤマハMAXAM(マグザム)

 4月1日の発売日からやや遅れて、4月12〜13日にヤマハの新型スクーターMAXAM(マグザム)のプレス発表試乗会が東京の芝浦で開催された。すぐ脇のレインボーブリッジを渡ればお台場というロケーションである。両日とも天候は今ひとつであったが、ベストタンデム・アーバンクルーザー=”街乗りの二人乗り”を開発コンセプトに掲げるモデルの乗り味を試すのに大きな不都合はない。


 乗り味を試す以前に、やはりこのモデルの最大の特徴はスタイリングであろう。実車を前にすると、写真で見るよりもはるかに存在感があり、また非常に個性的である。まさにロー&ロングであり、これだけ低くて長い二輪車がはたして今まであっただろうかと思うほどだ。実寸としてはもっと長いバイクもあろうが、少なくとも250ccクラスのスクーターにおいては最長の2365mmという全長を誇る。フュージョンよりも100mm長いのだ。
 もちろん、低く長く見えるのは寸法の問題だけではない。ボディのディテールがそれを強調するものだからでもあり、とくに特徴的なのが「面処理」である。それぞれの「面」は曲面ではあるが、要所をエッジで締めつつ、各面がかなりフラット気味で面積も大きい。二輪車としては異例のデザイン手法である。しかも後席横からリヤトランクに至る部分やノーズ部分などの「上面」がかなり大面積なのだ。これが何を意味するかというと、単にクルマ的なデザインであるだけでなく、車高の低い二輪車であるから脇に立って見るときの視点では上面がとても明瞭に見え、かなり強調されることになるのだ。
 要は、雑誌の類が好む写真のようなローアングルではなく、普通にライダーや歩行者が眺める目の高さから見たとき、その特徴が最もよく表現されるようにデザインされている。新鮮であり、都会的であり、洗練されていて、じつにカッコよい。フュージョンを好む人々などは何と言うか分からないが、インダストリアルデザイン技術として方や完全に過去のもの、方や最先端かつ極めて高度である。

 電装類も洒落ている。ウインドスクリーンの奥に配置される液晶メーターは小振りだが、その奥の方から浮かび上がるような感じであり視認性はいい。夜間照明はかなり赤っぽいオレンジであり、これも華やかであると同時に視認性が良好。ホンダのバイクでは最近、ブルー系の照明光を使ったものがCB系などで登場してきているが、華やかではあるもののメーターの視認性としては疑問がある。
 ホワイトレンズを使用したテールライトは、かなり直線的なデザインとし、リヤまわりの面処理を強調している。テール&ストップランプはLEDだ。


 なお、車体色は試乗した黒のほか、上の3色がラインナップされる。さらに、Y`S GEARよりイエロー、及びオレンジの外装キットが近日発売される予定という。その他、ドレスアップパーツなどが豊富に用意されている。車両本体の各種仕様なども含め、詳細はヤマハ発動機のwebサイトにある。


●優れた走行機能


■ライディングポジション
 足着き性の良さは抜群である。身長170cmで、かつ旧世代の肉体ジオメトリーである僕でも、両カカトを接地させた上で楽にひざが曲がる。それも、通常着座位置のままでだ。一般にこのクラスのスクーターでは、尻を前にずらせば両カカトが接地するものの、走行するときの着座位置のままだと僕ではカカトが浮く。車体を抑えるなどの操作がしにくいライポジでもあり、ビッグスクーターはイージーそうに見えて実のところは意外に取りまわしに苦労する。が、こいつはなかなかよい。低いシート高やその適切な側面形状に加え、またぐ部分の車体幅がかなり絞り込まれている結果だ。スカイウエイブなどのようにフロアボードをえぐり込む形にはなっていないが、滑らかなボディラインを維持しつつ、フロア後方がタイトに絞られている。
 ただ、またぎやすくはない。前方フロアトンネルが高く、シート前端部も高い。まあ、車高が低いのだからバイク同様に後方へ足を振り上げてまたがれば問題ない。しかし、スクーターを前にすれば、多くは前方からまたぐだろう。パッセンジャーを先に乗せてやるという「ナイトぶり」を発揮させた場合も、そうなる。そういうときは、シート前端部にカカトで傷を付けないように気を付けたほうがいい。
 ライディングポジションは、非常にゆったりしている。身長180cmでも足を楽々伸ばせるフロア寸法の設定だ。個人的には、他のヤマハ製スクーターのように、ある程度のタイト感を持たせた設定のほうが車両との一体感があって好きだが、これはこれでよい。開放感、ルーズフィット感が主題のモデルなのだから。シートも、後端に尾てい骨をキッチリ押し当てないラフな(一般的な)乗り方が自然にでき、着座位置の自由度が高い。で、ルーズな自由感覚を主題にはしているが、後方にある低いランバーサポートがじつによく効いていたりで、意外なほどホールド性にも優れている。また、足着き性のためにシートクッションは薄めだが、クッション硬度を高めにしたシートの座り心地はけっこうよい。ソフトではないが、クルマのドイツ車的なシッカリ感があって心地よい。

■取りまわし
 前後に長いスクーターではあるが、Uターンは意外と楽である。じつはフュージョンに比して、車体前後長は長いけれども、ホイールベースは逆に10mm短いのだ。またハンドル切れ角も2度大きい40度である。一般的な片側一車線の道で、センターラインから前輪が若干はみ出るくらいで曲がりきることが可能だ。足を着かずにフルロックまでハンドルを切っての旋回(多くのユーザーはやらないだろうが)するときにも、スタビリティは悪くない。足着き性の良さもあり、このカテゴリーのスクーターとして取りまわし性能は普通であると言えよう。ちなみに、公式データの最小回転半径はマグザムが2.8mで、フュージョンは2.9m、マジェスティは2.7m、グランドマジェスティは2.6mである。
 ただ、ボディーのノーズ部分がかなり前方に伸びているので、状況によってはこれをぶつけないような気配りは必要だ。マジェスティは、フロントフェンダーをバネ下マウントにするなど、そのあたりを徹底的に追求したこのカテゴリーの先駆であるが、マグザムはポジショニングが異なる。下駄機能重視なら、マジェを選べばいいのだ。

■動力性能
 スタートする。へぇ〜と思うほど、意外にいい出足だ。鋭い加速というのではないけれど、大柄な車体からイメージしがちな鈍重さがない。サッサと発進する。
 聞けば、0→50m加速を重視した設定だという。とくに0→5mの加速を重視したとのこと。市街地での使用をメインにする作り込みが明快だ。エンジンと駆動系のパワーユニットは基本的にグランドマジェスティのものをベースとしているが、パワー特性やCVTの仕様は低中速重視に変更されている。パワーのつながり、というか加速の連続性も非常によく、よどみなくスピードが乗っていく。振動もかなり少なく、じつに気持ちがよい。ただ、80km/hあたりからは頭打ち感はないものの加速が鈍くなり、高速道路への進入では余裕タップリという感じではないかもしれない。けど、まいいっか、である。

■操縦性
 ハンドリングもじつに自然だ。倒し込みや切り返しはそれほど軽くないが、それはスクーターにありがちなヒラヒラ感ではないという意味であり、適度な手応えは安定感としてポジティブに感じた。柔らかい反力を適度に感じながらスイーッとバンク。通勤超特急ではないのだし、このモデルのキャラに合っている。フュージョンが、丸太をコロコロと転がすような、異常にロールセンターが低い感じなのとはまったく違っていて、要は普通なのだ。またマグザムは旋回性においても、特段に曲がるということはないが、外観から想像しがちな曲がりにくさはない。これも自然である。
 高速走行時にラフな操作をしたりしたときの、車体の剛性感にもまったく問題はない。剛性値ではなく、剛性感としての仕上がりがいい。スチールパイプ製のフレームは、長大なホイールベースでありながらも、アルミ鋳造製のグランドマジェスティのものと比較して捻り剛性が若干落ちる程度だという。サスを含めた車体の剛性バランスは、グランドマジェスティよりも優れているように思えた。しっかりとした剛性感がありながらも、いびつな堅さ感がなく、フル制動をしたときの安定感も良好だ。

■制動機能
 ブレーキングに関しても大きな問題は感じなかった。ヤマハらしく、前後ブレーキのレバータッチはカッチリとしており、どのくらいの力をかけているかが明確にフィードバックされてくる。それでいて、かけ始めの効力の立ち上がりは穏やかであり、ラフな操作も許容するし路面状態の変化にも対応しやすい。絶対制動力もまずまずである。フル制動では、前輪がロックし始めるあたりでフロントフォークが前後にしなって振動するが、このクラスの一般的なフロントフォーク構造では平均的な事態であり、まいいっか。それに、フロントがそのような限界状態になっても、あるいはリヤが完全にロックしても、長大なホイールベースを持つこのモデルでは、車体の挙動が極めて穏やかなので不安感はあまり覚えない。

■サスペンション
 サスペンションのホイールトラベルは、フロントは一般的で100mm。しかしリヤは、13インチのホイール径を採用しつつ低い車高をねらったため、75mm(マジェよりマイナス13mm)と少な目だ。その結果は、やはり乗り心地に表れる。路面のギャップに乗ったとき、フロントの衝撃吸収性は普通なのだが、リヤは少々強い突き上げを感じることもある。詳細に言えば、ギャップに当たった瞬間の衝撃がやや強く、またその直後に後輪が路面から離れる時間がやや長い。
 ということなのだが、乗り心地としてはそれほど悪くない。ソフトではないのだが、スポーツ指向の堅めのサスといった感じであり、シッカリ感であってガサツ感はないのだ。走行安定性としても問題はなかろう。
 なお、リヤサスにはマジェのような、スプリングのイニシャル調整機能はない。ボディ形状から、現実的には調整が難しいので省いたのであろうか? とにかくそういうことだから、リヤサスの設定はタンデム乗車を基準とした設定から変更できない。従って、ソロライドではリヤが堅めに感じても当たり前だ。タンデム乗車では、上記のような堅さ感は大幅に減少する。


■タンデム

 ヤマハがこのモデルで最大の特徴と標榜するタンデム性能については、残念ながら当日、その真価を試すに相応しい最良のパートナーが不在(?)だったので適切な評価ができているか怪しい。それでも、概略は述べることができよう。
 まず、ヤマハが以前からマグザムにおいてはタンデムシートの低さが美点だと強調していた宣伝により生まれかねない誤解を修正したい。運転者側とパッセンジャー側のシート高が同一に近づくほど快適ということはないのだ。パッセンジャー側は、適度に運転者側より高いほうが視界が確保され圧迫感がないもの。かといって、高すぎれば不安感が高まり、一体感も減少する。
 今回、マグザムにてシート高を下げる努力を行ったのは、各機種において、ラゲッジスペース確保などの理由から多すぎた前側座席との段差を少なくしたという意味なのである。このジャンルで一般に150mmほどある落差を100mmにしたのだ。パッセンジャーが普通に上半身を前に傾ければ、その口元が運転者の耳元に行く設定との説明があった。うまいことを言うなと感心。
 結果として、ほどほどの前方視界、ほどほどの一体感であり、後席の居心地はよい。シートの座り心地も、見かけは小さいが優れた機能を発揮するランバーサポートによるホールド感にしろ、周囲にグルリと巡るグラブバーの握りやすさにしろ、どれも良好だ。また、後部座席のシート高が低く設定されているため、パッセンジャー(二輪車に乗り慣れているとは限らない)が乗降しやすいのも美点であろう。
 従来のヤマハ製スクーターで不満だった事項である、パッセンジャー側の足元の収まりもいい。フロアボード(ステップ?)は高めで面積も大きい。ボディ側はフラットで妙なエッジもなく、すねに当たる部分もない。
 そして、操縦性も良好とできよう。ロングホイールベース及びタンデム側シート高の低さにより、ソロライド時との重心変化が少なく、操縦性への悪影響が最小限に抑えられている。

■収納性

 マグザムにおける最大の欠点を挙げるなら、収納許容量の低さであろう。シート下のラゲッジスペースは、今やこのクラスではヘルメット2個が入るのが常識であるが、マグザムの場合、公式にはジェット型が1個だけである。関係者のコメントでは一般的なフルフェイスも可能とのことだが、これは各自のヘルメットで確認したほうがよかろう。とにかく、シート下の前方メイン部分は、ヘルメット1個でいっぱいである。ビジネスモデルではないが、スクーターの概念からすると少々少なすぎる。普通のデイパックが収まらないのだ。デイパックを丸められればよいが、その内部にA4のバインダーが入っていれば、納めるところはどこにもない。
 ただ、メインスペースの後方にあるサブスペースは使い勝手がよい。上右写真のように、深さはないが意外と広く、また後方は間口の下に物を押し込む奥行きがある。聞けば、コンビニ弁当を突っ込むことを考えたのだという。もちろん、この後方側も防水のためのウエザーストリップ機構(ゴムのシール)がある。


 そのシート下のほか、ハンドル下にはグローブボックスがある。1箇所だけだが、容量は上左写真のごとく大きく、またマジェ伝来のイグニッションキーと干渉しにくい蓋の形状でもあり、使い勝手は悪くない。
 さらに、車体後方にはトランクがある。残念ながらここには一般的なヘルメット(フルフェイスもジェット型も)は入らない。安全性から僕はその使用を勧めない半キャップ型ヘルメットは入りそうだが、とくかくここも使えそうなスペースだ。車体後部の左側にあるキーシリンダーに鍵を突っ込んでひねると、クルマのトランクのように、自動的にパカッと開くのも気分がいい。


 物入れのスペースに関しては、満足できなかった。新しいカテゴリーとはいえ、誰が見てもスクーターであり、その概念からすればデイパックが収まらないというのはちょっと意外である。とはいえ、そうした収納性などの実用機能をあちこち突き詰めていけば、従来のマジェスティに戻ってしまう。文句が出るのは百も承知。根底部分でそれを投げ捨てての、新感覚のスタイリング、新感覚の乗り物へのチャレンジ。マグザムは、大いに評価されるべきだと思う。
 そして乗り味に関しては、開発した技術陣諸氏には失礼だが多くの面で「意外」という台詞を使用したくなるほどの上出来だった。外観がまったく普通ではないにもかかわらず、自然な感覚で走れる。スタイリングなどの新鮮さは当然ながら重要だが、それゆえのエクスキューズを走行機能に被せなかった仕事には拍手を送りたい。
 さて、このマグザム。メーカー側の開発コンセプトでは、マジェスティ(とくにショートスクリーンのCタイプ)が築き上げたストリート系スクーターの次世代である。ターゲットユーザーの年齢層でいえば、そのマジェが開拓した人々、20〜30歳代なのだそうだ。タテマエを外せば、もっと若い層かもしれない。しかしながら、この洒落に心惹かれるのは若者だけなのだろうか。意外と、オヤジにうけるかもしれない。価格も、税抜き数値でライバルのように若干の端数を差し引かず、ちょっきり60万円という潔さ。高くはなく、カッコよい。
 ただし。
 やたらうるさくて迷惑なだけで、一方で加速はやたらと遅いスパトラ装着軍団が横行するのじゃ……進歩がない。従来のデカスク定番を超えた新世代のライフスタイルが、このマグザムを節目として、世代を超え深く普及することを期待したい。