☆05年型RTL250F、そしてホンダ現況


 4ストローク化の課題は、トライアルの世界でも間近に迫っている。トライアル世界選手権(WCT)では、2006年より参加マシンが4ストローク車に限定されるのだ。それに先立ちホンダでは05年より、市販トライアラーを現在の2ストエンジン使用のRTL250Rから、RTL250Fに切り替える。昔はともかく、現在の高度化したWCTでトップ争いを演じることを目的としたものとしては、初の4ストマシンと言えよう。
 新しい時代を切り開く、その最先端マシンを取材した。合わせて、掲載のタイミングを逃していたハイブリッド・スクーターなどホンダが開発中の近未来二輪車の実態をここで紹介する。
 なお、上の写真で僕の記念撮影につき合い後方で『セミ』を決めていただいているのは、ホンダ契約ライダーの小林直樹氏である。


●新RTLの性能は2スト車と同等以上か


 RTL250Fのプロトタイプは、去る5月に開催されたWCT日本グランプリにテスト参戦。小川友幸選手のライディングにより、2日間の競技でともに9位に入賞し、そのポテンシャルの高さを実証した。上の走り写真がそのときのものだが、フロントフォークとライポジ関係を小川選手の好みに合わせたほかは、プロトとはいえ一般市販モデルとまったく同じである。
 周囲がすべて4ストとなった時点で勝つことを考えたのではない。現在の2ストマシンと真っ向から勝負できるマシン。それこそが、RTL-Fの開発テーマだった。来年のWCT参戦ワークスマシンが、このRTL-Fベースになるかどうかに関して、ホンダは現在のところ明言を避けている。とは言え、レギュレーション変更より1年前倒しで市販モデルを切り替える、つまり2ストのRTL250Rの販売を終了してしまうところに、自信のほどがうかがえる。


 RTL-Fは05年1月より本体価格798.000円で発売になる。それに先立ち、プレス向け発表試乗会がツインリンクもてぎで9月21日に開催された。僕はトライアルマシンなど、5年以上は乗っていない。過去の話としても、乗ったこともある、という程度だ。そんな人間が、全日本やWCTで勝負するための純粋な競技車両について、戦闘能力をとやかく言う資格はない。けれども、新しいトライアルの出発点となる、いやトライアルに限らず今後のスポーツバイクのヒントを秘めていそうな、そんなRTL-Fがデビューする場は、この目で見て体で感じておきたい。ライダーというより、ジャーナリストとして出向いてみた。なお、走行写真は宮崎敬一郎氏に無料奉仕で撮影していただいた。
 その印象を端的に言えば、大脳で何も考える必要のないマシンであった。指1本で軽々と後輪がリフトするほど強烈に効くブレーキ以外は、まったく違和感がない。写真のごとく極めてへっぴり腰ではあるが、本当に久しぶりのトライアル走行を心から楽しめた。
 2ストの現行RTL-Rにも比較のために試乗した。RTL-Fで、こうした走行を体が少し思い出しウオームアップも済んだあとのことであるが、にもかかわらず、こちらでは少々緊張した。抜き身の日本刀に触れるような、そんな感触である。元来、ロードレーサーやモトクロッサーよりも、トライアルマシンは一般人がまたがったときにそう感じるものである。馬力は知れたものだが、競技で勝つために研ぎ澄まされた武器の匂いが凡人を拒絶する。しかしながら、RTL-Fはその匂いが弱く敷居が少し低く思えた。
 まずはエンジン特性。4ストで、しかもコンペティション用となれば、スロットルを開けた瞬間にドカッと弾き出されるように加速するのではないか。そういう予想は、まったく外れた。スロットルを開けた分だけスムーズにトルクが立ち上がる。スムーズだが力強く、そして確実に。
 RTL-Rの場合は、開け始めは確かに滑らかだが、その後にモリモリと強烈にトルクが盛り上がる。これがスポーツマシンの2ストの特性だったな、と僕の体に染み込んだ記憶が蘇る。その特性を活かした戦闘力というものもあろうし、雰囲気的にもエキサイティング。4ストのRTL-Fの場合はそのドキドキがない。が、ストレートに吹ける分だけグイグイ躊躇せずに開けられる。急登坂時やステアケース飛びつき時などに欠かせないパワーピークを過ぎてからの伸び、つまり無理の効くオーバーレブ特性などはこちらが上手だ。聞けば、12000rpmまで回るのだという。極低回転でも粘り強く回る250cc単気筒でだ! トライアル用エンジンは遅乗り低回転指向などと思っている方は、考えを改めるべきである。ここ一発のバッキュンと吹ける性能がなくては勝てない。
 スロットルオフ時のエンブレも、いきなりドカンと効くわけではない。ロードレースのMotoGPに限らず、強すぎるエンブレはスポーツライディングにおいて邪魔ものでしかないが、4ストのエンブレを意識することはなかった。
 そして、トライアル競技における4ストの欠点にエンストしやすさがあるが、これも問題なしだった。4ストの単気筒で低い回転域を使った旋回では、パスッと失火して痛い目に遭うことがある。トライアル競技では致命的な問題で、それを回避するのは開発時の重要なテーマでもあったらしいが、見事な仕上がりだ。当初の僕は職業病で信用していないから、普通のトレール車などの調子を頭におき、エンストしないだろうかと恐る恐る、かなり気にしていた。慣れるにつれ、どんどん低い回転を使って走ってみたのだが、ついにエンストの兆候は現れず、2ストと同様に扱えることを確認した。それが巨大なフライホイールマスに頼っているのではない証拠に、望めばスパッと鋭い吹けも得られる。
 というようなチェックを終えたころ、ハタと気付いた。トライアル競技の頂点で闘う4ストとしては、過去の例から言えば少なめの排気量だが、パワーやトルクの不足はまったく感じない。それにだ、操縦性に重さも感じない。車重が2ストと同等だとしても、普通に考えればエンジンのヘッドが高くて重い分だけ高重心な印象となるはずだが、それがない。何も意識せずに、走りに没頭できる。
 それに、トライアル車は概してガレ場を勢いよく走り抜けるようなシーンではフロントまわりがセンシティブになりがちだが、むしろそうしたところでの安定性が高い。砕石が敷きつめられた急な下り坂なども、スイスイ走れてしまう。こうしたステアリング挙動の安定性指向は、プロライダーにとっては鈍重に感じられるのかと小林直樹氏に聞いてみたが、そんなことはないと断言していた。
 プロの武器としても一流で、門外漢の僕にも乗り慣れたマシンのごとく遊べる。使い古された言葉だが、優れたコンペティション・マシンは乗りやすいということか。RTL250Fはエンジンを日本のホンダで作り、スペインのモンテッサ社でコンプリート組み立てを行う。そして、ヘッドライト付きの『モンテッサCOTA〜』も、近いうちに発表となろう。排気量が軽二輪枠でもあり、日本でのナンバー取得は容易。様々なライダーにとって、期待が膨らむマシンだと思う。


●実質新規設計のエンジンと乾燥車重72kg!


 エンジンを4スト化すれば、常識的に言って車重は重くなる。しかし、常識は破るためにある。現行RTL-Rと同じ、乾燥車重72kgに仕上げること。これがRTL-F開発の最大のテーマだったようだ。
 使用するエンジンはモトクロッサーのCRF250Rのものをベースとしている。ベースとは言うもののトライアルマシンに必要な特性を実現するための、ボア・ストロークの変更(78.0×52.2mm→76.5×54.2mm)、クランクケースやシリンダーヘッドを新作となると、これは普通に言えば新作エンジンである。そこまでやるのなら排気量も増やしてしまえばいい(トライアルに排気量制限はない)とも思うが、レスポンスや高回転での伸びを考え合わせると、結果的に249.1ccのサイズがベストだったという。そのキャパシティで、求められるパワーやトルクを発揮させる努力をしたのだ。
 さてトライアル車では、モトクロッサーより大きなフライホイールマス(+2.7kg)が必要。酷使されるクラッチのサイズアップ(φ125→140mm)や、その作動の油圧化も行われた。こうした重量増加要素を含みながら、エンジン単体重量は24.1kgで、CRFの1.2kg増に収められた。RTL-Rのエンジン単体重量22.6kgに肉薄する。ヘッドまわりでは、CRFの変則的なSOHC(カム軸が吸気バルブ真上に位置する=ユニカム)から常識的なSOHCに改められている。そしてバランサー軸の排除。ちなみにバランサーがないものの、RTL-Rよりはよっぽど振動が少ない。クランクバランスの見直しや、エンジンマウント方法の工夫があったという。また、ミッションは6速→5速としている。
 もうひとつ特徴的なのは、吸気系のFI化だ。じつはこのマシン、バッテリーのないいわゆるフラマグ点火である。バッテリーがないのに、電子制御燃料噴射なのだ。高速で走る一般レーシングマシンとは違い低速で酷使されるゆえ、ラジエターには電動ファンも付いている。このあたり、以前のレポートにあるスマートDio Z4で感じたホンダならではの技術力を感じたのだが、そのFIの仕上がりが秀逸なのは前記のとおり。「このマシンでは噴射プログラムの設定に最も苦労しましてね」とは、開発責任者の岡崎和美氏の言葉だが、じつにシンプルな構造で高度な性能を獲得している。そして、12000rpmまで回りながら極低速でもエンストせずにスムーズなレスポンスというのは、キャブレターでは困難で、FIならではのメリットを活かせた結果だという。トライアル車ゆえレスポンス第一主義であることから、8孔インジェクターはスロットルボディではなく、シリンダーヘッドに直付け! 吸気バルブになるべく近づけようとした結果である。乗り手の好みにより、噴射セッティング変更をするためのキットもオプションで用意されている。


 とにかく、軽量コンパクト化に努力し、エンジン特性は2ストのRTL-Rからスムーズに乗り換えができるものにした。エンジン形状のCRFとの比較、パワー特性のRTL-Rとの比較は上の図の通りである。クラッチを油圧化しても外寸を広げない工夫などにより、車体もスリムに仕上がった。
 しかし、これだけではRTL-Rと同じ車重にはならない。FI化もエンジン本体以外の周辺機器で重量増加の要素だ。そこで思い切った設計を施したのがフレームだ。アルミ製ツインチューブ型のフレームは、メインパイプの断面寸法を、RTL-Rに対して高さが71→50mmへ、幅が22→16mmへ縮小。トライアル車ならではの部分があるにしても、フレーム剛性の考え方をかなり洗い直して、メイン部をグンと細くした。こうしたことにより、フレーム単体重量はRTL-Rの5260gから3730gへと軽量化されている。下図の、青い線がRTL-Rで、赤い線がRTL-Fのものだ。


 このほか、ブレーキディスクやドリブンスプロケットの締結を6→4箇所にするとか、ホイールを36本スポーク→32本スポークにするなど、様々な箇所で軽量化への努力が行われた。ガソリンタンク内に燃料ポンプなどを内蔵するため、タンク容量は2.0→1.9Lと減ったが、燃費が1.4倍ほどいいのでこれはオツリが来る。
 というような開発努力の結果、現状の2ストマシンに勝るとも劣らないポテンシャルを実現。さらには一般趣味ライダーにとって、圧倒的に現行モデルよりも馴染みやすく楽しめるトライアルマシンが誕生した。切羽詰まって、やればできるものだな、と思った。技術というものはいつもそうだが、理論だけでは具現化しない。必要に迫られ追いつめられると、結構なことが実現する。僕は世代的に2ストへの哀愁がないわけではないが、4ストのスポーツの世界は明るいと思った。その可能性が最も問われる(排気量ハンデのない)トライアルの世界でこれだけの結果が出るのだ、軽量ロードスポーツだって……。
 モトクロスでヤマハに先行されたホンダが、ウチがやらねば誰がやると気合いを入れつつ作り上げたRTL250F、来期のWCTにもぜひ4ストで参戦してもらいたいものだ。


●ホンダ・ミーティングに見た明日のホンダ


 ホンダでは91年より基本的に隔年で、国内外の報道機関やジャーナリスト向けに、最新の完成技術や実現しつつある開発中のものを紹介する『ホンダ・ミーティング』というイベントを開催している。04年も8月の末に、その8回目が開催された。
 上写真の左は、ホンダの誇る屋根付き全天候型の衝突実験室において、その時点ではまだ正式発表していない新型レジェンドを見事に全損させての、ライフとの50km/hオフセット衝突の実演。前回01年のときと較べ、衝突後のドアの開き具合はレジェンドはもちろん、ライフのほうも格段によくなっていたのが印象的だった。デカイ=高価なクルマの乗員だけが生き残れればよい、というものではない思想が貧乏人としては嬉しかった。だけど2組に分け2日間行われたのだから、レジェンド代だけでも1000万円は超えるぞっ! って、やはり貧乏人的発想である。
 右は、ちゃんと走ることを実演する燃料電池二輪車。ライダーは本田技研工業の社長、福井威夫氏である。福井氏はこのイベントで、F1にも乗るはRC211Vにも乗るは(乗らされる?)で、二輪技術者時代から面識は長いが、ホンダの社長業は肉体労働だなぁと思った。楽しそうだったけれど。
 それはともかく、ここまでのイベントをやる自動車あるいは二輪車企業は、少なくとも僕の知る限りホンダだけだ。新たな世界を拓くべく突進する、そしてそれを広く知らしめる姿勢の強さに感心する。

 そのイベントで見たり体験したものの中から、二輪車に関わる部分をここで紹介する。ポイントは、難しいと言われる二輪車の安全性向上と、そして地球環境に対するローインパクト化だ。高性能に対する興味は、偽善者ぶらない真っ当なライダーなら当然いっぱいあるはずだが、そればっかりで済む時代は過ぎ去っている。2007年までに、少なくとも国内向け二輪車のすべてをFI化すると宣言している、そんなホンダが社会的責任をどうこなしていくかの手法を見てみよう。

●二輪車用SRSエアバッグ

 ホンダでは以前から二輪車へのエアバッグ採用実現を模索し、ゴールドウイング(水平対向6気筒の大型アメリカンツアラー)で実験と開発を進めていた。今回はもっと身近なスクーター、シルバーウイングでの開発状況が公表された。
『風船』を火薬の爆発で膨らませ、乗員の被害を最少限に抑えるのがSRSエアバッグ。だが、その風船を密室で膨らませるクルマと違い、二輪車は開放された状況。しかも、乗員の姿勢はリーンアウトとかハングオンとか様々である。クルマのように拘束するのが目的ではなく、衝突対象物との直撃を避けるのが目的とは言え、風船を膨らませる形状には難しいものがある。シートベルトのようなものが風船を押さえているあたりがミソか。また、従来のゴールドウイングでは前輪まわりにだけあった衝突センサーが、カウル部にも設けられたあたりに、度重なる衝突実験での工夫がうかがえる。
 こんなもの、二輪車にはいらねーよ、というあなたは、事故の経験がないのでは。経験がある方なら、重量増加がそこそこに抑えられるのならば欲しいと思うのではないだろうか。
なお、ホンダでは前後連動ブレーキとABSの組み合わせを各車に導入する意向だ。2007年までに、250ccクラス以上のすべてのスポーツ車にその設定車を用意するという。スポーツ車とは、CBR1000RRなども含むスーパースポーツ系、ツーリング系やシティ系など一般スポーツ系である。さらにスクーター系も含まれる。アメリカン系は微妙なところだ。そして2010年までには、ABSの作動性確率が難しいオフロード系を除く250cc以上のすべてのバイクに、前後連動+ABSブレーキ仕様を設定するという。
 ABSは、多くのライダーが言うほど無粋なものではなく、ないよりはあったほうがいいと僕は思っている。現状、それを真っ先に推進しているBMWの場合、確かにありがたい機構だが絶対制動力の低下が大きく、またABSシステムの信頼性(常に確実に作動するかの問題)そのものにも疑問があるが、日本メーカーがこうした動向に参入することで、技術競争と切磋琢磨が進み、より優れたものになるのではないかと期待する。
 前後連動に関しては、これもBMWが先行しているが、その無神経なクルマ的作動特性には大いに疑問がある。CBR1000Fを発端に、試行錯誤を繰り返してきたホンダの腕前に期待したい。けれど、二輪車がそこまでクルマ的になるべきなのかどうかには、僕自身も悩むところ。ほとんどのライダーが、バイクのブレーキ性能の50%も使用していない現実をインストラクション活動などで日常的に見ている立場だけに、必要だとも思う。反面、コントロールする意志のないヤツは所詮転倒するのが二輪車だという旧来単車乗り気質も首をもたげる。まあ、設定車を用意ということだから、ユーザーに選択肢はあるのだが……。
 なお、こうした動きは、ホンダだけに留まるものではない。先のインターモトでの展示車を見ても、スズキがバンディット650にABS装着車を設定するなど、二輪車の制動装置に関する万人対応というのは、全世界的な動きとなっている。

●燃料電池二輪車

 これ以降の写真は、ホンダ提供のものである。衝突実験室以外は、カメラの使用は御法度だった。まあ、世界のホンダの、その秘密の巣窟である栃木研究所とそのテストコースであるから、当然であろう。
 さて燃料電池二輪車であるが、展示してあったものを前に「これはディスプレイ用ですよね」と言ったら、担当者氏が目の色を変えた。「とんでもない、ほらっ」とイグニッションキーをオンにする。チュイーンとか音がして、しばし。やがてマフラー(?)から水かボトボト落ち始める。ホンダ独自開発のFC(フューエルセル=燃料電池)スタックを使用した二輪車は、ちゃんと動くものであった。のちに社長が立派に乗って見せてくれた。
 この試作車は、125ccスクーターをベース(そのわりにはデカイ)とし、電動駆動部を後輪スイングアームに集中配置して車体スペースを確保している。車体中央部に氷点下でも始動可能な『Honda FC STACK』を配置し、周囲に効率良く補器類を配置することで、同クラスのコミューターと同等の車体サイズを実現したという。とはいえ、各種機器に占領されてシート下の収納スペースなどはなく、実用性としては現状スクーター感覚ではないが、とにかく水素を燃料とする本物の燃料電池二輪車が実走しているのだ。試乗はさせてくれなかったぞ〜っ、などとケチを付けるのは簡単だが、とにかく走らせないと明日は拓けない。今後に期待したい。

●ハイブリッド二輪車

 これは試乗できた。
 電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッド・ヴィークルはクルマの世界では実現しているが、二輪車で公開されたのはこれが初めてである。低スロットル開度では電気モーターのみの駆動。そこでエンジンが動いていても燃費効率のいい低回転状況を維持し、バッテリーの充電に専念するという仕組みだ。後輪側に直結(ギヤ機構はある)される電気モーター&発電機が、駆動系のフリクションで損失を受けないよう、クラッチがダブルで装着されている。減速時はモーターが発電機となって慣性エネルギーを電気に変換する『回生ブレーキ』機構が備わる。
 ゆっくり走り出すと、満充電状態だったからエンジンは動かず、音もなく発進。電動ヴィークル感覚である。そこでグイッと右手をひねると、エンジン駆動が加味され力強い加速に。その電動スムーズ走行から力強い加速に移るところが、ちょっと急激な変化。まあプロト車だから仕方ないか、と言ったら担当技術者氏もそこが気になっている様子だった。
 でもこれ、既存のハイブリッド四輪車の慣例で行くと、認定上はエンジンが主役でモーターは補助機構。エンジンパワーは認定上の最大限を発揮しつつ、さらにモーターでアシストということも可能なはずである。すごく速くて、燃費(化石燃料の使用削減)や有毒排出ガスの削減を実現しつつ、活発な動力性能の二輪車が可能ということではないだろうか?
 アイドルストップ機構搭載のスターターACG(交流発電機)や電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)、電子制御ベルトコンバーターなどを備え、後輪直接駆動式モーターを採用したシリーズ&パラレル式ハイブリッドシステム搭載。二次電池としてニッケル水素電池をフロントカウル内に収めるなどで、シート下にはヘルメット収納可能などユーティリティスペースを確保しながら、ハイブリッドシステムの大幅な小型化でスタンダードサイズの原付スクーターDio Z4と同等の車体サイズを実現している。重量もDio Z4に対し10kg以内の増加に抑制。燃費では30km/h定地燃費で1.6倍以上、CO2排出量は37%以上の削減を目指している。あとは、価格だろう。

●電動二輪車

 これも試乗できた。
 ハッキリ言ってヤマハのEV=電動二輪車、パッソルよりもずっと速い。けっこう実用的な加速をするし、電動モーターのキィーンといった唸り音もずっと少ない。もちろん、ホンダがパッソル以上の性能を実現すべく必死に開発したことは尋ねるまでもなかろう。でも尋ねたのだが、絶対速いから乗ってくださいよっ! おおせの通りであった。
 バイク未体験の人種を重視したことから、スロットル操作がグリップではなく、右グリップ下にあるレバーを押すというATVと同様の方式であるのは、誤操作から急発進しないのはいいとしても戸惑うなぁ〜。バッテリーがフロントカウルとフロアー部に埋め込みで脱着できないというのは、さてど〜なんだろ?……という疑問はあったが、クルマの燃料電池車で鍛えた電気系技術力からか、その走行性能は見事であった。早々に市販し、ヤマハとバトルしていただきたい。電動二輪車の快感は、乗ってみれば分かる。

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 ホンダはやはり底力があるな、と思う今日このごろである。いやいや、ホンダだけではあるまいじつのところは。我々の目に見えないところで、他のメーカーもいろいろやっているに違いない。そして世の目に触れるところでも、ヤマハの燃料電池二輪車が公道試験に移ったとの記事が9月23日付の新聞に出ていた。スズキの連続可変ミラーサイクルエンジンもやがて市販されるのではないか??? そういう最新技術が技術のための技術に留まらず、地球環境へのローインパクトや省資源は当然として、ファン・トゥ・ライドをさらに高めるものとしても磨かれていくと僕は信じる。信じ続ける。