☆03年型CB1300SF


 ホンダの旗艦ネイキッドモデル「CB1300 SUPER FOUR」がフルモデルチェンジを受け、2月7日付けで発売になる。それに先立つ1月28〜29日の両日、西伊豆において同車のプレス向け発表試乗会が開催された。
 全面新設計されたフレーム、大幅に手を加えられたエンジンなど、そのメカニズムの変更点はすでに各専門誌などで解説されていたが、エンジン特性や操縦性など走りの変貌は、想像以上のものだった。車名は従来型をそのまま継承し、スタイリング的には初代ビッグワンに近いものとしているが、内容はまったくの別物。従来型CB1300SFやCB1000SFの延長上にはない、完全な新型車と理解した方がよい。そして、このモデルにかけるホンダの意気込みがかなりのものであることが、発表会場のあちこちに感じられた。



●巨漢誇示からスポーツNKに


 従来型のエンジン特性は、速さや強烈なダッシュ力の誇示というよりも、巨大なピストンが上下動しながらズリズリと「にじり出る」ようなフィールが特徴だった。しかし新型は違う。スパッと吹け上がり、鋭く加速する。
 2000rpm近辺のトルクは厚くないが、3000rpmから5000rpmという現実的な走行で多用する回転域に、トルクがていねいに盛りつけられている。それも、いわゆる「トルク型」という言葉からイメージしがちな重々しさではなく、洗練された軽快な吹け味の中に大排気量ならではのトルクの厚みを感じるという、なかなか巧みな味付けである。
 それは絶対的なトルク値に加え、点火時期や新規採用されたインジェクションの高度な制御によるところも大きい。普通の道を、クルマの流れに従ってごく普通に走っているような状況からの追い越し加速などで、誰もが感じ取れる力強さ感が作り込まれているのだ。
 3速ギヤの3000rpmあたりからちょっとスロットルを開けたような場面。スロットル開度でいえば15〜25%程度だが、その『ちょっと右手をひねった』ところで、ドゥオッッッと体が押し出される。従来型のような、ドローッと走る余裕感覚や落ち着き感みたいなものが少なくなった反面、俊敏さと力強さの合体した独特の元気フィールが全面に押し出されている。要は、とてもスポーティーな味付けなのだ。その意図的に作られた特性は、Uターン時とか、ワインディングでのスポーツライディングといったシーンで、スロットルを開け始めたとき予想以上にトルクが立ち上がって少々扱いにくいと感じるときもあるけれど、一般ライダーにわかりやすい力強さ感の表現を重視したのであろう。スロットル全閉から開度30%あたりまでのトランジェントにおいて、より厚いトルクを発揮するセッティングが施されている。
 こうした仕様のおかげで、現実的な速度域で直線路をクルージングするだけの状況でも、力強いトルク感を満喫できる。そこではまた、透明感のある低音のサウンドが堪能できるのだ。従来よりもさらに厳しくなった、世界一厳しい日本の騒音規制に対応しながら『よくぞここまで』と感心するほどの『楽しめる音』が作られている。6000rpm以上ではトルクの盛り上がり感がない代わりに、排気音が高音質になりながらシュパッと軽快に吹け上がるスポーツマルチの味もある。それはやたらと試せない速度域になってしまうのではあるが、痛快な伸び感も備えているというわけだ。

 新型ではエンジンで8kg、モノバックボーンからダブルクレードル型にしたフレームで7kg、リンク機構を排除したリヤサスや新型ホイール採用などにより足まわりで5kg、合計で20kgもの軽量化を達成している。さらに、高度な剛性バランスの設定、車体重心に近づけたライポジ。そうした構成から生まれる操縦性は、極めて軽快なものだ。
 最初は、フロントからスコンと倒れ込む、あまりにクイックなバンキング特性に戸惑ったほどである。その戸惑いが一般ライダーにとって慣れの問題なのか否かを結論づけるには今回の試乗は短時間すぎたが、とにかくライダーがアクションを加えると同時に、バイクのフロントが小気味よくコーナーに向かう、という表現を使うことはできる。タイトなコーナーが連続する場所でも、じつに俊敏な走りを楽しめた。大排気量車を振りまわす重厚感が主題ではないものの、リーンしていくときにはどのバンクアングルでもそれなりの手応えがあり、心許なさはない。従来型で感じられたコーナリング時の各種違和感はまったく消え去っている。
 前後のサスは、乗り心地としてはやや堅めで、とくにリンク機構がなくなったリヤ側から突き上げを感じる。スポーツ性においても、コーナリング時にリヤのストローク感はもう少しほしい。ただ、試乗時は山の上など気温がマイナス2度しかなく、そんな寒さがサスの動きに影響していた面はあろう。気温が低ければダンパーオイルは固くなり、タイヤも固くなる。ブレーキはフロントの効力の立ち上がりが強すぎるように感じたが、これも常識的な気温で今一度試してみたい。

 装備面は、日常使用にかなり配慮されたものだ。メインスタンドがあり、多くの荷かけフックもある。シート下の物入れスペースでは、その前方にカワサキのZRXほどではないが雑誌が入れられるほどの深さや容量が確保され、その後方の浅い部分にも雨具類などかなりのものを収納できる。メーターパネル中央の液晶部は、減算トリップやストップウオッチ、特定の日にちへのカウントダウンなど、非常に多くの情報を表示させることができる。
 なお、速度計は輸出仕様と同じ270km/hスケールで、数字は260km/hまで表記されている。これはスズキの03年型バンディット1200Sも同様で、国内仕様は180km/hまでの表示という「法規制ではないお約束」は撤廃されたようだ。ただし、180km/hで作動するスピードリミッターは従来どおり装備されている。ちなみに、欧州仕様CB1300の最高出力は115ps/7500rpmだ。
 その他、CB1300SFに関する諸元などの詳細はホンダ公式サイトにあり、プロモーションビデオも見ることができる。

 今回の試乗日は、気圧配置の関係で気温が極端に低く風も強かった。試乗時間も限られていた。上記のレポートは、そういう状況での、あくまでファーストインプレッションと理解していただきたい。それにしても、CB1300SFが完全にスポーツネイキッドへと変身したことは確かである。
 そのスポーツの方向性は、俊敏さを主題としているものの、カワサキZRX1200Rとはまた違った軽快さで、新しいスポーツ性だ。ヤマハXJRも改良を受けた03モデルが登場するし、カワサキZ1000もある。今後、それらと比較しながら、新型CBのポジショニングをさらに明らかにしていきたいと思う。