ワークスマシンの場合、各種ディメンションがわからないように、真横の写真などは公表しないのが常である。が、それにしても、かなり後方からのアングルと、ライディングフォームをとったライダーにごく接近したものという、マシンがわかりにくい写真2点のみの発表だ。フロントまわりなど、まだ煮詰まっていないか大きな秘密があるのか、いろいろと想像力をかき立てさせてくれる。この写真とリリースから指摘できるポイントは、以下の3つであろう。 ●徹底した空力処理 ●スチールフレーム ●特徴的な排気系 まず空力に関して。マシン開発はかなりここをポイントに設計されているようだ。タンクやカウルのスリムさ、カウル下部が後輪車軸まで伸びていることなどは分かりやすい点だが、後述するスチール製フレーム採用や排気系のレイアウトも、空気抵抗の少なさのために選択されたものと思える。 スチール製の細いパイプを使用したフレームは、市販車との共通性を誇示する販売政策上の意図も想像できる。が、車体のストレスメンバーとしての機能を、パワーユニットへ大幅に負担させる設計をした場合、巨大な断面積を持つアルミ製ツインチューブ方式の必要度は低くなる。むしろ、スチール製としたほうがコンパクトになり、車体幅を狭く、つまり空気抵抗を少なくできる。重量的デメリットもない。そういう観点だろう。フレームは簡素なトラス構造で、完全なダイヤモンド型であり、エンジン前上方にステアリングヘッドを形成するためだけの役目と思われる。 エンジンに関してはほとんど見えないが、後方に伸びるまるで2ストロークのチャンバーのような、極太の排気管が目を引く。90度V型4気筒エンジンであるが、前後各バンクの2気筒ずつは、太い1本の排気管で処理されている。各バンクごとの2気筒が同時点火のため、排気干渉を避けるにはこれだけの太さが必要なのか、それとも新しい排気理論が込められているのか、興味深いところである。 それにしても、V型エンジンの排気管レイアウトの難しさがわかる写真だ。通常のスイングアーム・ピボットがあるフレームでは、こんなレイアウトは不可能である。リヤサスのクッションユニットは、リンク機構でも熱的にも、相当に厳しい配置となっているはずだ。アルミ板プレス成形のスイングアーム形状も、また然りである。ピボットは左方向へのオフセット配置となっている。 その2本の排気管は、アルミ製のひとつのサイレンサーにつながっている。そのサイレンサーの後端には、形状の異なるふたつの排気出口がある。それがどういう意味を持つのか? 消音のための技術なのか? 排気効率向上の技術なのか? とにかく、このドゥカティの本気と、日本の4メーカー各社のマシン、あるいはアプリリアなどとの激闘が楽しみである。その対決は2003年まで待つことになるが、日本メーカーのマシンに関しては、その実戦投入が目前である。 なお、前回のエンジン発表のときと同様、以下のHPにも情報がある。 http://www.ducati.com/racing/index.jhtml 以下に、ドゥカティジャパンより報道関係者向けに配信されたリリースを、ほぼ原文のまま掲載する。 *********ドゥカティジャパンの公式リリース********* MotoGPドゥカティの初の写真公開 お披露目はイタリアGPムジェロ戦 5月30日 Source: Ducati Corse srl 2002年4月1日ボローニャ発 新しいMotoGPに参戦用のドゥカティ・プロトタイプ・レーサーの開発は順調に進んでいる。過去数ヶ月に渡る風洞実験によって、極めて高いパフォーマンスを生みだすアエロダイナミクスボディは、開発過程において様々な影響を受けたにもかかわらず、すでに確実な物となった。サーキットテストと、より過酷な風洞実験プログラムの終了後、最終仕様が決定される。 ●MotoGPプロジェクトの責任者であるドゥカティ・コルセのマネージングディレクター、クラウディオ・ドメニカリ談 『我々のエンジニア達は、新しいプロトタイプ・レーサーとそのエンジンを同時かつ自由に設計できたことで、必要不可欠な要素を全て統合させたコンセプトでの開発が可能となった。とくにエンジンについては、車体デザイン上の要求と、ライダーが機能的なライディングポジションを得るために必要な要素を全て付加した上でデザインが決定された。その結果、非常にコンパクトなバイクになった。ライダーは、コーナリング時のポジショニングにおいて最大限の自由度を与えられ、また、ストレート走行時における究極のアエロダイナミクス効果を得られる直線的なライディングポジションを無理なく得ることができる。広範囲にわたる3D/CADの設計方法の採用により、ライダーの乗車姿勢形状をデザインしたヴァーチャル・モックアップによる各コンポーネンツ間の理想的なレイアウトと連携を解析し、前例のない各コンポーネンツ間の統合性を得ることができた。 この重要かつ要求の厳しいプロジェクトにおいて、あらゆる角度から全ての局面を検討した。空気抵抗値を極限まで小さくすることについては、とくに重点が置かれた部分である。なぜなら、燃料消費に関するレギュレーションの下で最も効率的なデザインを生み出すのに極めて重要なポイントが、空気抵抗の削減であると考えるからである。デスモセディチ・エンジンのコンパクトな特性により、空力的に最も効率の良いライディングポジションを設定することが可能となり、優れた空洞実験の結果が得られた。 チューブラー・スチール・トレリス・フレーム、およびテール・フェアリング下のエキゾーストパイプは、デスモドロミック・システムやL型構造のエンジンレイアウトと同じく、ドゥカティのスポーツバイクモデルの典型的特色を引き継いでいる。 チューブラー・スチール・トレリス・フレーム構造の選択は自然なことであった。ワールドスーパーバイク選手権におけるドゥカティの数々の優勝が、これが優秀なテクニカルデザインであることを立証している。このMotoGPプロトタイプ・レーサーには、L型構造のデスモセディチ・エンジンをフレームのストレスメンバーとして最大限に活用するという革新的な構造が用いられている。その結果、フレーム単体重量とその容積の大幅な削減にもかかわらず、必要となる車体剛性レベルに到達している。 エキゾーストシステムは、公道仕様のドゥカティ・スーパーバイク・ファミリーと同じく、アエロダイナミクス上の利点を考慮してテール下に配置された。 ドゥカティコルセのテクニカルディレクター、フィリッポ・プレツィオーシ率いるチームの協力により、全てが予定通りに進んでいる。そして今日、最終版のプロトタイプ・レーサーを世界中のプレスにお披露目する日取りを発表することができる。発表はイタリアGPムジェロ戦の5月30日木曜日に行う。また、ドゥカティ・ファンの方達は、世界中のドゥカティストがイタリアに集結し、ドゥカティ・バイクへの情熱を分かち合う2年に1度のビックイベント“WDW2002”の会場で6月14日から16日までの期間にご覧頂ける。』 *********以上公式リリース*********
このクラスが楽しみなのは、日本の4大メーカーが激突するのもさることながら、アプリリアなどヨーロッパのメーカーも俄然その気になっていることだ。 そして、ついにあのドゥカティからも、来年からの本格参戦を目指したマシンのエンジンが発表になった。ギヤ駆動DOHC4バルブ90度V型4気筒で、もちろん吸排気バルブを強制開閉するデスモドロミック機構を備え、2スト500で一般的となっている2気筒ずつの同爆……。90度Vというのは、車体構成上からは不利な面が多々あると僕は思っているが、しかしそれにしてもコンパクトにまとまっていると感心する。発表されたのは、ほんの「お絵かき」にすぎず、いかにもイタリア的ではあるけれど、それでもなかなか本気を感じさせてくれるのはドゥカティマジックなのか? 詳細は以下のHPにてご覧いただきたい。ここで掲載している映像はそのHP及び報道関係者向けリリースから借用した。 http://www.ducati.com/racing/index.jhtml 上記のページの中央やや下のLATEST NEWSのところの一番上やその下をクリックするとエンジン関係のデータがある。 なお、2月5日の昼前に、ドゥカティジャパンより以下のリリースが報道関係者向けに配信された。原文をそのまま掲載する。 *********ドゥカティジャパンの公式リリース********* “デスモセディチ ツインパルス エンジン”MotoGPに参戦 4気筒 989cc L型エンジン 前後バンクごとの同時点火方式 / デスモドロミックタイミングシステム 採用 従来型の点火レイアウトテストを含めたサーキットテストは7月に予定 レースデビューは、ライダー2人の構成で、MotoGP2003シーズン第1ラウンド イタリア・ボローニャ、2002年2月4日 昨年5月にヘレスで発表された『MotoGPプロジェクト』の始動から9ヶ月を経て、ドゥカティコルセはDesmosedici デスモセディチ(16バルブデスモ)と呼ばれる新型エンジンの設計段階を完了した。次の3ヶ月以内にダイノマシンテストを開始する。 ドゥカティコルセ、マネージングダイレクターのクラウディオ・ドメニカリが、新型エンジン開発におけるエンジンデザイン決定プロセスについて説明する。 『コンピューターシミュレーションを基に、MotoGPのレギュレーションによって得られるあらゆる可能性を分析した結果、MotoGPで他に負けない競争力のあるバイクを造るには非常に高いエンジン出力が必要だと確信した。従来のツインシリンダーエンジンでそのような高出力を得るのは(レギュレーションにより4、5気筒エンジンに対し10Kgの重量減が認められたとしても)困難になって来るであろう。なぜなら、深刻な異常燃焼が起きるリスクを負いながらもボア径は極限にまで大きくならざるを得ないはずだからだ。』 『このため、準備研究段階においては、ツインシリンダーのオーバル(楕円形)ピストンエンジンが新しいレギュレーションに対して優れたエンジンレイアウトであると考えた。4、5気筒エンジンと同重量にはなるが、このエンジンレイアウトはマルチシリンダーエンジンと同レベルで戦うのに必要なパフォーマンスを発揮しながらも、ツインエンジンの典型的利点であるエンジン出力特性を併せ持つものであった。』 『しかしながら、更に分析を進めた結果、最善の方策は‘ダブルツイン’と決定した。それは、ツインエンジンの点火サイクルを再現した2気筒ごとの同時点火方式(ツインパルス)による、4つの円形ピストンを持つエンジンの設計であった。これは、リアタイヤの消耗を抑え、コーナ−脱出時のライダーのコントロール性を高める‘ビックバン’効果を生む。』 『デスモセディチエンジンの開発に要されるコストは安価で、開発期間は比較的短いものになるだろう。このため、ワークスチーム以外のサテライトチーム、プライベートチームにとっても採用しやすいものとなる。ワールドスーパーバイクでそうであるように、MotoGPにおいてプライベートチームの基準点となることがドゥカティコルセの意図である。』 『同時燃焼によって発生するより大きなストレスに耐えるように設計されたデスモセディチパワーユニットは、したがって、さらに進んだ利点を持つ特有なエンジンである。テストされるのは2つの異なるエンジン点火レイアウトである。ツインパルスのテストに加え、より高出力が望める従来の点火順序でもテストするが、おそらくトラクションの損失が生じるだろう。どちらの点火順序をレースで使用するかは、サーキットテストの結果とライダーのフィーリングが決定することになる。』 ドゥカティコルセのテクニカルダイレクター、フィリッポ・プレッツィオーシが率いるチームが設計したデスモセディチのもうひとつの特色は、長年に渡ってすべてのドゥカティエンジンに採用された独占的特色であるデスモドロミック・バルブタイミングシステムを使用していることである。 『このMotoGPプロジェクトのおかげで、デスモドロミックの真のポテンシャルを立証することが出来た。テスタストレッタエンジンの開発における材料解析によって培われた経験が、ニューマチックバルブ駆動システムの使用により発生する高額な開発コストと複雑な問題に悩まされることなく、18,000rpmを越えるエンジンを設計することを可能にした。』 ダイノマシンによる新型エンジンの最初のテストは5月に、サーキットテストプログラムは7月に行われる予定である。目標は、MotoGP2003シーズンの第1ラウンドより、ライダー2人から成るファクトリーチームで参戦することである。 より詳しい情報と定期的にアップデートされる最新情報については、数ヶ月後に公表される。またドゥカティコルセの公式ウェブサイトwww.ducati.com/racing にも掲載される予定。 ●DUCATI DESMOSEDICI TECHNICAL SPECIFICATIONS エンジン 4ストローク、L型4気筒 ボア:N/A ストローク:N/A 排気量:989cc 予測最大出力(クランクシャフト):161kW(220HP)以上@16,000rpm 予測最大トルク(クランクシャフト):100Nm(10.2kgm)@14,000rpm タイミングシステム DOHC、1気筒あたり4バルブ ギヤトレイン式デスモドロミックタイミングシステム 冷却システム 水冷 イグニッション 電子誘導放電ユニット チャンピオン製スパークプラグ マ二エッティマレリ製スティックコイル フューエルシステム マ二エッティマレリ製インダイレクト電子燃料噴射 マ二エッティマレリ製シングルインジェクター・スロットルボディX4 排気システム テルミニョー二製エキゾーストシステム ギヤボックス 6速、脱着式ギヤボックス、フロントメッシュ式ギヤ *********以上公式リリース********* |