☆スクーター新時代の到来か?
 ついにホンダからも、600ccの大型スクーターであるシルバーウイングが登場した。ヤマハからはすでに500ccのT−MAXがデビューしている。従来は大型スクーターと言えば250だったが、これで新たなスクーターのジャンルが構築されることになりそうだ。いや、今までの「スクーター」という概念だけでは、定義しきれないのかもしれない。

☆シルバーウイング


 4月3日、富士山が美しい山中湖周辺でホンダのシルバーウイングのプレス向け試乗会が開催された。その走りを簡単に言えば、従来のスクーターの延長線である。快適性重視で、乗りやすさも文句なし。そして「加速感」としては滑らかで穏やかな印象なのだが、実際には非常にトルクフル。高速道路の実勢速度を容易にリードすることもできる。
ただ、コーナリング中にブレーキングしたとき、あるいは100kmとかの高速コーナリングなどでは、重量が重いこともあり、一般のスクーター以上にスタビリティの不足を感じる。フロントサスまわりの剛性不足が現れるのだ。乗り心地としては基本的にソフトだとできるが、やはりフロントサスの作動はバタついた感じである。
 スタイルは重厚さをねらった押し出しの強いもの。上の写真のように、しっかりした作りで美しく作動も明確なクリック感があるタンデムステップを始めとして、質感は非常に高い。高級乗用車の方向性である。

☆シルバーウイングはインジェクション仕様エンジン搭載


 エンジンは水冷2気筒サイドカムチェーン方式のDOHC4バルブ。2軸1次バランサーを装備し、さらに車体へはラバーマウントしていて、振動はかなり少ない。ただし、そのラバーマウント構造から、クイックな倒し込みなどでは手応えのソリッド感に欠ける。もっとも、普通の乗り方では柔らかタッチの操縦感覚で神経が疲れないという見方もできようか。
 吸気系はインジェクションで、始動性はいいし、標高が高くても不調になったりしない。排気系に装備される酸化キャタライザーと合わせて、排ガスのクリーン化も実現している点は高く評価できる。
 フロントフォークのインナーチューブは写真のように、通常のスポーツバイクでいうところのアンダーブラケットまでで終了しており、これは250ccクラスも含め他のテレスコ方式を採用するスクーターも同じ。T−MAXだけがスポーツバイクと同じ構造なのである。このフォーク形式を採用することで、フロントに大型の収納スペースを確保できる反面、サスペンションの剛性は低くなる。

☆T−MAXと比較する


 トルクフルなシルバーウイングではあるが、走らせてみると「それほど力強い加速ではないな」と思う場面もある。チェックしてみると、そう感じるのは50〜95km/hの間。世界一厳しいとも言われる日本の加速騒音規制に適合させた結果である。輸出仕様と乗り較べればその差は明確だ。100km/h以上は国内仕様も同等の加速となる。
 オートマで加速騒音を下げるには、一般スポーツ車のように、特定ギヤ段数における特定回転域だけ点火時期を遅らせる……といった手法が使えない。そこで、駆動系のローラーウエイト、トルクカム、トルクスプリングなどを国内専用設計。これにより先の速度域でフル加速したときのエンジン回転が下げられていて、加速が「本物」ではないのだ。点火時期やインジェクションの制御、マフラーなども輸出仕様と違うが、エンジンの絶対性能にはあまり差がないと思っていい。

 この駆動系を輸出仕様のものに組み替えるのは、それほど難しいことではないらしい。国内仕様のノーマルでもそれほど不足はないのだからヨシとするのか、駆動系を改造するのか、それとも逆輸入車を買うのか、それは各自の判断であろう。
 T−MAXと比較した場合でも、加速力は先の速度域でちょっと遅れをとる程度である。輸出仕様であれば、発進の瞬間から高速域まで、全域においてひとまわり速い。そしてシルバーウイングには、T−MAXにないものがある。振動の少なさ、優れたウインドプロテクション、快適なライポジ、足つき性の良さ、シート下の大きな収納スペース、使いやすい駐車ブレーキ。世間で認知されている「スクーター」に要求される機能が、綿密に作り込まれている。
 一方、T−MAXにはシルバーウイングにはない、いや普通のスクーターにはないものがある。ツインエンジンの闊達な回転フィール、市街地でもワインディングでも威力を発揮する車体のスタビリティの高さと優秀な運動性、メリハリの利いたタッチで制動力も高いブレーキ。走らせていて、とにかく愉快であり、飛ばす気になれる信頼性もある。こちらは、新たなジャンルのスポーツマシンであろう。