☆GSX−R1000


スズキのGSX−R1000を、2週間ほど手元に置いて使ってみた。
 昨年末、アメリカはアトランタでのワールドプレスミーティングにおいてその驚異的な性能は体験済みだが、公道での試乗は初めてである。そして今回、サーキットを走らせたとき以上に、このバイクが新しい種類の高性能のバランスを備えていることを痛感した。
 エンジンは秀逸の一語に尽きる。低回転からきっちりと緻密にトルクが盛り付けられている。3500rpmからすでに、ブ厚いトルクの山に乗るのだ。5000rpmからは、強烈という表現も似合う加速。こうした常用域での加速力は、ライバルの比ではない。さらに、8000rpmからの怒濤のパワー。どの回転域からスロットルをひねっても、実質でものすごく速い。圧倒的に速い。呆れるほど速い。バカみたいに速い。コーナリングを少々サボろうとも、立ち上がりでのひと開けで他車を簡単に引き離せる。それも、滑らかなパワーのつながりと上質なスロットルレスポンス。こういう速さの質を備えたビッグスプリンターのエンジンは、今までなかった。
 操縦性は、軽快さや鋭利な旋回特性は備えていない。路面をダイレクトに感じるソリッドなコントロールに浸る愉悦というのもさほどない。タイトコーナーなどは、かなりダルに感じるのも事実。しかし、乗り方の如何に関わらず、あらゆるコーナーを平然と曲がり続けて行く。中高速コーナーでのスタビリティは抜群。こういう速さの質の操縦性を備えたビッグスプリンターは、今までなかった。
 そういうコーナリングマシンとしての高性能を備えながら、超低振動で乗り心地もよく快適なクルージングバイクだったりもする。シティバイク的な軽快性はないものの落ち着きがあって癖のない操縦性やイージーなエンジン特性のため、気楽にゲタ代わりに使えるバイクだったりもする。拍子抜けするほど従順なバイクである。こういうビッグスプリンターは、今までなかった。

 エンジンはGSX−R750のものがベースながら、主にストロークの拡大で排気量を稼ぎ、コンパクトな1軸バランサーを装備するなど、別物としての高度なまとまりを得ている。車体の基本構成は750譲りであるが、アルミフレームはメイン部の肉厚を2.0→2.5mmへと増加し、右側エンジンハンガーも左と同じく2点マウント化するなどで剛性を向上。カヤバ製のフロントフォークは専用設計で750よりも360グラム軽く、また抜群の作動性を誇る。やはりカヤバ製のリヤショックは、これも750用より180g軽くフリクションロスは35%低減されている。タイヤはBS製で、リヤのBT010は190とワンサイズ太い。フロントはR1000のために新作されたBT011で、スチール製のモノスパイラル式ベルト構造とし、ショック吸収性などを向上させた柔軟性重視のものだ。このフロントタイヤ、及びシリンダーヘッドが14mm高いことが、750とはかなり違う落ち着き重視の操縦性を生む要点になっていると思われる。
 やや気になるのがライディングポジション関係の作り。ステップまわりは、その根元付近の内側への追い込みが不足であり、チェンジペダルなどはシフトロッドを避けるための張り出しが邪魔になる。スチール製のヒールガードは平坦で、これは後方が内側へ曲がり込んでいるべきだろう。シートの座面前傾不足、柔らかすぎるクッション、滑りやすい表皮なども気になる。
 僕としては、こうしたポジション関係に手を加え、フロントタイヤを750のものにしてステアリングダンパーを排除し、よりスポーツ性重視のバランスにして乗ってみたい、という思いもある。しかし、それはそれ。剃刀の刃を渡るような緊張感を主題とするのではなく、肩肘張らずに、大仰なところなどまるでなくサラリと超高性能。その本質は間違いなく新しい時代のスーパースポーツである。