●2005年型BMW HP2 ENDURO(BMW発表の詳細解説)

■■■ニューBMW HP2 ENDURO

 以下の内容は、EU市場向け(2005年4月現在)の仕様を基準として記載されており、その他の市場においては仕様、標準装備品、オプション設定などが異なる場合もあります。また、車体寸法、エンジン出力などはBMW AG発表のデータとなるため、日本仕様とは異なる場合があります。なお、仕様は随時変更される可能性がありますので予めご了承ください。

■コンセプト、主張、特性
■モデル記号およびHP のモデル名称
■開発、技術的特徴、デザイン
■装備範囲
■主要諸元

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■コンセプト、主張、特性


 多くのボクサー・ファンの夢が現実になろうとしています。BMW Motorrad は誇りを持って、妥協を許さないスポーティな軽量エンデューロ・モデル、ニューBMW HP2 ENDURO を発表します。ニューBMW HP2 ENDURO は、熱狂的なオフロード・エンスージアストと、過酷なオフロード・コースのために製造されたボクサー・モデルです。
 最高にピュアでありながら、あくまでスタイリッシュ。考え抜かれた最高品質の装備を完備したBMW HP2 ENDURO は、道なき道を自由に駆けぬける歓びを味わうための条件をすべて備えたマシンです。HP2 ENDURO は、悪路においても他のモーターサイクル以上に低重心というボクサーのコンセプトのメリットをフルに発揮します。また、遊び心いっぱいのハンドリング、軽量、高性能パワー・ユニットを搭載するHP2 ENDURO は、オンロードにおいても極め付きの「駆けぬける歓び」を満喫できます。ライダーにさまざまな使い方の選択肢を提供することができるHP2 ENDUROは、最もパワフルで、他の追従を許さないオフロード・ボクサーです。
 このニューモデルは、ボクサー専門のスペシャリスト、エンジニア、メカニックから成る少数精鋭のチームにより開発されました。開発メンバーは、プライベートでもオフロード・モーター・スポーツに熱狂的に参加しており、「熱狂的なプロフェッショナルのみが、熱狂的なプロフェッショナルが本当に欲しいものを提供できる」というシンプルで単刀直入なモットーのもと、通常行われる一連の開発プロセスを超えて業務に打ち込んできました。
 BMW HP2 ENDURO は、あらゆる面で、意欲的なエンデューロ・ライダーのニーズや好みに合わせて変更が加えられた、完全に独立したモーターサイクルです。すべてが新しくなった軽量サスペンションには、BMWが長距離耐久ラリーから得た豊富なノウハウが盛り込まれています。リア・ホィールのエア/ スプリング・ダンパー・システムは、世界で初めてモーターサイクルに搭載された誇るべきシステムです。エンジン自体は、最小重量になるよう最適化を図り、ドライブトレインは特にオフロードでの走行を考慮して全体をレイアウトしました。
 ニューHP2 ENDURO のすべての構成部品にとって、軽量化設計が最大の目的でした。その結果、このモーターサイクルの路上走行時の総重量は200kgの大台を超えることなく、装備重量(DIN規格に準拠)は195kgとなり、乾燥重量はわずか175kg にすぎません。
 このニューモデルは、人間工学的にも優れ、軽量化とあいまって最も過酷な地形においても優れた俊敏性と容易な操縦性を保証します。低重心のボクサー・エンジン、極めて滑らかなエンジン回転、低速域からの力強い加速、さらに優れたバランスのシャーシが組み合わされたHP2 ENDURO は、難易度が高いハードなテクニカル・コースにおいて最強と言われる単気筒の競合モデルよりも、多くの部分ではるかに優れています。一方、オフロードの高速走行セクションにおいても、エンデューロ・ボクサーは優れたパフォーマンスと走行安定性を発揮します。
 ニューHP2 ENDURO のスポーツ・エンデューロ・マシンとしてのクォリティをアピールするため、BMW Motorrad はプライベート・レーシング・チームをサポートすることを決定しています。このチームはドイツ・クロス・カントリー・チャンピオンシップ(German Cross Country Championship:GCC)などの各種オフロード・イベントにHP2 ENDUROで参加する予定です。BMW Motorrad チームのGCC ライダーは、このシリーズの昨年の勝者であるフィンランドのベテラン・ライダーSimo Kirssi氏です。ドイツ以外では、カリフォルニアで開催されるバハ500およびバハ1000の両方のレースにエントリーする予定ですが、他にもオーストリアのエルツベルグ・レース(Erzberg Race)に参加する計画もあります。
 HP2 ENDURO の発売は、全世界で2005 年秋の予定です。


■モデル記号およびHP のモデル名称


 新しいブランド名および新しいモデル記号:「HP」は「High Performance(ハイ・パフォーマンス)」の頭文字で、「2」はこのスポーツ・エンデューロを識別するモデル記号であり、フラット・ツイン(水平対向2気筒)のパワー・ユニットに由来しています。「ハイ・パフォーマンス」という言葉は、エンジン出力の強化だけでなく、あらゆる条件下におけるマシンのスポーツ性能、マシン全体の顕著な卓越性を表しています。また、同時にこの「ハイ・パフォーマンス」は、モーターサイクルを個々の構成部品の集合体としてではなく、むしろより現実的に1つの全体として見たとき、部品すべてのバランスが完璧に取れていることを意味しています。これは、細部に至るまでの完璧さ、優れた走行特性、純粋な駆けぬける歓びを意図した全体コンセプトに従い、完璧に開発された結果に他なりません。「HP」と言う記号は、このように極めて洗練されたモーターサイクルから連想させるプレステージを象徴しているのです。
 HP2 ENDURO は、BMW Motorrad が開発している新たな独立したモデルラインにおける第1号モデルです。量産モデルの技術的基礎は利用しているものの、明確に一貫してスポーツ性能を極め、最も卓越した製品および機能という特別な目的に対して妥協することなく取り組み、量産モデルからは確実に一線を画しています。
 この極めて特殊なモーターサイクルは、熱い情熱を持ったプロフェッショナルによる少人数のチームが、大量生産モデルの開発に必要な通常の枠組みを超えて取り組みました。この特別チームというコンセプトと、極めて効果的なプロセスにより、開発エンジニアは何年もの個人的経験に基づき、重要優先課題を特定し、個人的なノウハウや独特の「手法」を、「フィルター」や障壁を通すことなく製品に直接注ぎ込みました。同時に、エンジニアは最新鋭の開発/シミュレーション・ツールと、BMWが提供する技術的オプションのすべてを使用し開発を行いました。BMW Motorrad のHPモーターサイクルに独特の魅力を与えているのは、このハイテクと個人の技能の共存であることは間違いありません。
 つまり、このHP2 ENDURO は「特別なもの」なのです。高級で本物志向の製品は、市場ではたいへん希少価値があります。従って、この特別なマシンの価格は、装備範囲の規模、製品そのもののレベルの高さ、そして生産量が比較的少ないことに相応したものになる予定です。
 HP2 ENDURO を購入した顧客が、一定レベルを超えるライディング技術を持ち、その技術を更に向上させたいと望む熱心なライダーである場合に備え、BMW Motorrad では特別の専用トレーニングと魅惑的なオフロード・ツアーを用意しています。これに参加すれば、新しいハイ・パフォーマンス・コンセプトを段階的なトレーニングにより理解することができます。


■開発、技術的特徴、デザイン

*右のエンジン投資図は凝ったバランサーを装備する通常の1200cc水平対向エンジン(R1200RT)のもの。

 HP2 ENDURO は、エンジンとオンボード・ネットワークはR1200GSをベースにしています。しかし、それ以外はほとんど全ての構成部品が新規に開発されたか、もしくは大幅に変更されています。開発エンジニアにとっては、言うまでもなく軽量化、およびオフロード走行で要求される事項に対して完璧かつ妥協なく焦点を当てることが第1の基準でした。
 HP2 ENDURO のテストは非常に興味深いものとなりました。というのも、新型マシンの装備範囲および走破性能が広範囲に(極めて過酷なオフロードからアウトバーンでの全開走行まで/凍てつく寒気の中から灼熱の砂漠まで)にわたったため、非常に要求が厳しくもあり、骨の折れる経験だったためです。このニューモーターサイクルは、他のマシンが過去に直面したこともないような最も過酷な走行条件にも確実に対応する必要があるからです。
 HP2 ENDURO が受けたテストやトライアルの範囲は、このマシンにふさわしい包括的かつ徹底的な内容でした。それは、広範囲にわたるダイナモメーター・テストだけでなく、酷暑や極寒の地でのトライアル・セッションに加え、BMWのテスト・コースにおける過酷なオフロード・テストまでも含んでいます。ジミー・ルイスの指導のもとエントリーした「バハ・カリフォルニア・デザート・レース」では、アウトバーンや全種類のテスト・コースでの高速トライアルと同じくらい、モーターサイクル全体および個々の構成部品の両方に対する総合テストとなりました。スペインと南アフリカでのオフロード走行耐久テストは、最終的にHP2 ENDURO が量産に移行する前の活動全体の締めくくりともなりました。

●ドライブトレイン
 BMW Motorrad の開発エンジニアは、エンジン・コントロール・ユニットに若干の調整を加え、R1200GSから流用したフラット・ツイン・エンジンの出力をわずかながら増加させました。その結果、プレミアム・プラス・ガソリン(RON98)を使用したときの最高出力は77kW(105ps)になりました。一方、最大トルクは115Nm/5,500rpmで変更ありません。ボクサー・エンジン固有の構成や設計原理によるエンジン作動時の滑らかさ、精密さといった基準の高さだけでなく、超低回転域からでも穏やかながら力強くパワーが高まる特性によって、HP2 ENDURO のライダーはクラッチを使わなくても、ゆっくりスムーズにマシンを走らせることができるようになりました。この優れた特性は、新世代ボクサーの、洗練された、トルク志向の、オートマチック・アイドル・スピード・コントロール付エンジン・マネジメントに負うところが大きいでしょう。
 その結果HP2 ENDURO は、特にパワーやトルクの扱いやすさが非常に重要となるような悪路のコースや深いぬかるみで威力を発揮します。
 HP2 ENDURO は、基本的に主として悪路で使用されることを想定し、軽量化のメリットを阻害しないためにもエンジンにバランス・シャフトがありません。
 インテーク・シュノーケルは、若干変更されました。前側にデフレクターが取り付けられ、可能な限り飛翔する水分の浸入を防ぎます。このデフレクターは、オンロードを走行するときには取り外すことができます。
 エキゾースト・マニフォールドは、R1200GSから変更なく流用しました。ただし後端のサイレンサーは新構造になり、旧型より約2kg軽くなっています。サイレンサー内部はGSと同じですが、スリーブ・パイプを下げてサイレンサーを短くしました。この短寸化は、HP2 ENDURO がケースや荷物を積載する設計になっていないために可能となりました。ケースや荷物を積載する場合は、高温の排ガス流によりケースが過熱しないよう、長いサイレンサーが必要となります。
 BMW Motorrad のエンジニアは6速ミッションに着目し、中間シャフトのべアリングを変更、強化して高荷重や高応力に耐えられるようにしました。一方、ギア比やその他の機能はR1200GSと同様です。
 また、特殊構造のパラレバー・スイング・アーム(モーターサイクルのランニング・ギアのセクションを参照)、およびドライブシャフトのラバー・ダンパーが変更され、ドライブシャフトの長さがパラレバーのサイズに合わせて調整されました。ドライブシャフトの二次減速比は2.82:1で変更ありません。
 ドライブトレイン全体は、高品質のマグネシウム色パウダー・コーティングが施されています。

●サスペンションおよびランニング・ギア
 HP2 ENDURO のランニング・ギアおよびサスペンションも、慎重に選んだハイ・グレードの構成部品を使用し、すべて新開発となっています。BMW Motorradは、25年間に及ぶエンデューロ・ライディングの経験をこのランニング・ギアの開発に注ぎ込みました。エンジニアはサスペンション・ジオメトリーと全体の構成に着目し、たとえばアウトバーンなどでの高いレベルの方向安定性による優れた走りと、遊び心にあふれたハンドリングや優れた俊敏性を備えたオフロードの走りのクォリティとの間にあるギャップをいかに埋めるかということを目標にしました。

●ラリー競技から受け継がれたフレーム

 フレームのレイアウトは、1999〜2001年にダカール・ラリーやその他の国際デザート・レースでワークス・チームが使用したR900Rレース・マシンからBMW Motorrad が得た知識に基づいています。フレーム自体はスチール製中空スペースフレーム構造で、全体的に非常に均質で最適な剛性を確保しています。

●ストローク応動式ダンピング機能付きテレスコピック・フォーク

 HP2 ENDURO のフロント・サスペンションには、スプリング・ストロークが270mmの倒立式テレスコピック・フォークを装備しています。これほどのスプリング・ストロークを従来のテレレバーで実用化することはできません。このフロント・フォークの特徴としては、広範囲にわたるさまざまな設定に合わせて、縮み側と伸び側の減衰力をそれぞれ個別に、段階的に調整できる点が挙げられます。さらに追加された調整機能として、極限的な状況において、ランニング・ギアの機能低下を抑えるための油圧システムがあります。
 BMW Motorrad独自開発のこのシステムが誇る機能は、圧力がかかった状態での縮み段階における減衰力が比較的ハーシュネス(突き上げるような衝撃)の影響を受けないことを利用しています。これにより、ダンパーの主動作範囲における縮み段階での減衰力を極端に硬くすることなく、突き上げや振動に対する減衰力設定を「硬め」にすることができます。
 直径45mmの固定スリーブ・チューブを備えたフォークは、十分な剛性を提供すると同時に、最大限のハンドル切れ角をもたらします。固定スリーブ・チューブには、効率的な耐摩耗性を備えた非常に耐久性のある特殊コーティングが施されており、これは従来の窒化チタン・ベースの表面コーティングに比べて優れています。

●革新的なリア・サスペンション_エア/スプリング・ダンパー・システム

 リア・サスペンションにおいては、BMW Motorradのエンジニアは以前と同様、新世代ボクサーの軽量化構造のために新たに開発されたBMWパラレバー・スイング・アームの原理に着目しました。効果という点では改善の余地がほとんどないと言えるパラレバーですが、HP2 ENDURO 用に見直され、GS用のものよりも30mm長くなりました。
 新しいパラレバーは、高張力、鍛造軽合金シェルで作られた溶接構造で、スポーツ・エンデューロ・ライディングにおける最も厳しい要求にも対応することができます。外側から見ると、この洗練された新構造は特にマグネシウム色のパウダー・コーティングが目を引き、ドライブトレイン全体を引き立たせています。
 BMW Motorrad は、スプリング・ストラットにも世界初の非常に革新的なモーターサイクル用サスペンション技術を導入し、新たな基準を設定します。BMWのスペシャリストは、コンチネンタル・オートモーティブ・システムズ社のドイツ人スペシャリストと共同し、エアのみで作動するスプリング/ダンパー・システムを開発しました。
 このエア/スプリング・ダンパー・システムの重量は2.3kgに満たず、従来の構造より約2kg軽量化されています。ただし、基本的な構成とダンパーの作動システムは、非常によく似ています。エア・スプリング・ストラットのダンパー・チャンバー内にもピストンが備えられています。ただし、このピストンは作動油で動くのではなく、プレート・バルブを通ってセカンダリー・チャンバーに強制的に送り込まれるエアで作動します。エアの流量を絞ることにより、減衰効果が得られます。空気は圧縮できるため、チャンバー内に閉じ込められた空気は、従来のスチール製スプリングに代わってスプリング効果を発揮します。
 スプリング・ダンパー・システムにとって、空気は理想的な特性を備えた媒体であり、さまざまなメリットがあります。
・ 高負荷時にバネ定数が「自然に」推移(システム内圧が増加)する。
・ スプリング・ダンパー・システムが突然機能低下した場合でも、高レベルの安全性(気体の物理法則に従い、温度上昇による気体圧力の増加)を保証する。
・ 高負荷時に減衰効果が「自然に」推移(温度上昇に応じて気体密度が上昇)する。
・ モーターサイクルの積載荷重に応じてダンパーが自動調整(周波数対応選択式ダンピング)される。
・ 耐熱性(高負荷時、起伏のある道や砂利道での温度上昇による減衰効果の減少なし)が高い。
・ モーターサイクルの積載荷重にも簡単な調整で適応できる。
・ シート高さ調整が容易である。
 バネ下重量はわずかに軽くなっており、それに応じてサスペンションの応答性およびリア・ホィールのトラクションが改善されています。
 エア・スプリング・ストラットは、3個並んだエア・チャンバーをそれぞれエア・ダクトでつないだ構造になっています。上部にある2個のチャンバーはアルミ製のシリンダー内にあり、ピストンにより分離されています。このピストンが縦方向に動くことでシリンダー内のエアが圧縮され、エア自体がスプリングの代わりとして作用します。同時に、規定量のエア・フローがプレート・バルブ(スロット絞り)を経由して別のチャンバーに流れ込み、この絞り作用により、減衰効果を発生させます。
 下部のエア・チャンバーは、ラバー・シートで作られた密閉式巻上げブーツ内に形成されています。このチャンバーは、ダンパーの上下運動に適度な自由を与え、スプリング・ストラットを外部から密閉し、ピストン・ロッドのシールを不要にします。これにより、システム内の摩擦を抑えています。特殊形状のコーンの周りをラバー・ブーツが転がるときの抵抗力により、システムの減衰作用を補足しています。
 スプリング・ストラットの外部は、完全に密閉された気密式です。それでも漏れが発生した場合は、エア・バルブから空気を足します。外部との空気圧差が生じるため、必要に応じてポンプで空気を注入したり抜いたりするだけで、シート高さが簡単に調整できます。ただし、シートを下位置に設定すると、スプリングの縮みストロークが減少します。これは、この設定が穏やかな走行スタイルに適しているためであり、問題ありません。
 負荷が変化したときのシステムの調整は非常に簡単で、空気圧を変更するだけです。このための重要で興味深い機能は、リア・フレームにある小さな「水準器」です。調整を容易にするため、ライダーがモーターサイクルの標準設定を読み取れるようになっています。さらに走行中にシステムに圧力を供給するため、HP2 ENDURO には圧力計付き手動式高圧エア・ポンプが標準装備されています。これは、悪路走行中にタイア空気圧が低下した場合の空気入れとしても使用できます。
 エア/スプリング・ダンパー・システム独自のユニークな機能は、その時々の要求に合わせてスロットルを絞り、内部の流量調整システムを精密に適応させることで得られる周波数に対応して減衰効果を変化させる点です。この方法で得られる重要な効果は、起伏のある路面でリア・ホィールのトラクションを驚異的に向上させることです。荒れた道路で発生するリア・スイング・アームの振動周波数域に対して特別に設定された減衰効果により、こうした平坦でない路面でもホィールが理想的な動きで追従し、最適なグラウンド・コンタクトを維持することができます。つまり、駆けぬける歓びを求めてフル・スロットルで加速したときでも、常に良好なトラクションが得られ、さらにブレーキを踏んだ場合でも高い安全性が確保されるのです。
 スプリングが完全に機能低下してしまった場合、特に大きな「起伏」を走行するときや高負荷時によくあることですが、スプリングの過剰な圧縮に対して空気によるバネ定数の「自然な」調整および周波数対応ダンピングが作用し、スプリングの機能低下を補います。
 ダンパーの基本設定も、調整ダイヤルを回してダンパー内でバイパスを開けることで調整できます。この調整は、快適志向の走行のための設定と悪路用の硬めの設定の2段階で行われます。
 ここでさらに重要な点として、停車時に(体重をかけるなどして)HP2 ENDURO のスプリングをたわませたとき、擬似的な減衰効果のような印象を与えることがあります。これは、このような状態での動きが、走行中の動きとは速度や周波数の点で一致していないために起こります。
 このシステムの重要なメリットは、完全密封式のスプリング・ストラットによる防塵性能にあります。これにより、シールのわずかな摩耗やガイド・ユニットに付着した微細な砂粒でさえ排除します。

●オフロード用クロススポーク・ホィール/フロント・ホィールは21インチ
「純粋なオフロード・マシン」というコンセプトを反映して、HP2 ENDURO にはすべてのテストで最も厳しい条件下に置き、その品質の高さをはっきり実証したクロススポーク・ホィールを装着しています。最低地上高と最適なガイダンスの観点から、フロント・ホィールは1.85"×21、リア・ホィールは2.5"×17 となっています。
 標準装備のタイアはメッツラー社とBMW Motorrad で共同開発したHP2 ENDURO 専用チューブレス「Karoo」タイアで、まったく新しい高性能オフロード・タイアです。サイズはフロントが90/90−21、リアが140/80−17となっており、モーターサイクルに求められる要求の高さと、モーターサイクルのパワーや速度に対するポテンシャルの高さの両方が反映されています。
 主にオフロード向けの特別装備として、ネガティブ比が大きいモトクロス・タイプのタイアが用意されています。このタイアはオンロード走行用としても登録されており、BMW Motorrad とメッツラー社がBMW HP2 ENDURO 専用に共同開発したものです。
 トレッドの異なるチューブ付きタイアも、もちろんオフロード走行に使用できます。この場合、リア・ホィールには標準装備でセカンド・バルブ穴が付いており、低空気圧での走行用にタイア・サポート(特別装備)が使用できます。一方、チューブレス・タイアでは、セカンド・バルブ穴はセカンド・タイア・バルブで密閉されています。

●重量を最適化したブレーキ
 ニューHP2 ENDURO のブレーキ・システムは、トップ・クラスの制動効果および制動力を備えると共に、現在の要求事項に正確に合致するよう精密に計算されています。フロント・ホィールはフローティング・キャリパー付きシングル・ディスク・ブレーキを備え、セミ・フローティング式のブレーキ・ディスクは直径305mm で、重量の理由から厚さはわずか4.5mm です。HP2 ENDURO のリア・ブレーキは、R1200GSから流用したシングル・ディスク付きスイング・キャリパーを備え、ディスク直径は265mmです。
 ブレーキ・ホースは、フロントのみスチール・カバーで覆われています。エンデューロ仕様のリア・ブレーキのプレッシャー・ポイントは、ややソフトである必要があるため、あえてラバー製ブレーキ・ホースが使用されています。
 市場投入時、HP2 ENDURO にはアンチロック・ブレーキABS は装備されません。

●燃料タンク、シート、操作系、付属品
 燃料タンク、シート、操作系の設計では、BMW Motorrad のエンジニアおよび開発担当者は、特にオフロード走行時の人間工学的要求事項やライダーがマシン上でスタンディング・ポジションを取る頻度に焦点を当てました。
 HP2 ENDURO の燃料タンクはまったくの新型で、上部フレーム・チューブ間にしっかり埋め込まれています。燃料タンクは、燃料タンクに最適な超軽量素材として非常に強度の高い半透明高密度ポリエチレンを使用し、軽量プラスチック・カバーで保護しています。タンク容量は13リットルです。
 カバーには点検窓が用意され、ライダーが外側からフューエル・レベルをチェックできるようになっています。目盛りの2本の線により現在のフューエル・レベルが精密に評価できます。悪路走行時に携行缶からタンクに補充した場合、必ず外側から点検窓で確認する必要があります。悪路ではモーターサイクルの位置が常時変化するため、電気式ゲージの表示には信頼がおけません。そのため点検窓のほうがより実用的です。念のため、HP2 ENDURO には他のモーターサイクルと同様に燃料残量警告灯が装備されています。
 降車時の取り回しの容易さを確保するため、BMW Motorrad のエンジニアは、タンクとシートの境目のフレームやモーターサイクルのアウトラインを、できるだけスリムで細くなるよう工夫しました。ツートン・カラーのシートは、特に前側の形状とデザインがスリムになり、このスリムなラインがタンク本体まで続いています。
 シートの基準高は920mmで、ステップ・アーチ・レングス(両股内側の長さ)は1,920mmです。アクセサリーのロー・ダウン・シートは高さ900mmです。
 ハンドルバーの固定装置はよく工夫されています。非対称の穴が設けられたハンドルバー・クランプにより、ライダーは必要に応じてワイド・ハンドルバーを2つの位置にセットできます。クランプを180度回すと、ハンドルバーの位置を前後に20mm動かすことができます。
 ハンドルバー自体はアルミ製で、端部に向けてテーパー状になっています。特に重要なのは、左右のハンドル切れ角が42度と大きくなっていることで、超低速走行時においても、優れた俊敏性と操縦性を確保します。
 防錆ステンレス製フットレストは大型になり、どのような場合でも、その時のライダーの姿勢や足の位置に関係なく、優れた安定性としっかりしたポジショニングに貢献します。この付近で特に注目する機能は、フットブレーキ・レバーの折りたたみ式スペーサーで、ライダーはツールを使用しなくても、足の位置に合わせてレバーの位置を簡単にすばやくセットできるようになります。これにより、走行中、ライダーがスタンディング・ポジションでもシートに座っていても、ブレーキ・ペダルは常に容易に操作できる位置にセットできます。
 BMWの特許であるこのメカニズムは、ブレーキ・シリンダーに対するブレーキ・レバーの位置が意図せずに変わることはありません。このメカニズムは、調整プロセスの容易さや利便性の高さだけでなく、必要な「遊び」を維持します。

●電気および電子装置、計器類
 CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)バス・テクノロジーによる革新的なオンボード・ネットワークは、R1200GSから変更なく流用されたものです。このシステムの特徴は、従来のオンボード・ネットワークよりケーブル数が少ない構成、従来型の溶断式ヒューズを使用しないわかりやすい構成、オンボード・ネットワークの故障診断への完全適合であり、これはエンデューロ・シーンでも大きなメリットとなっています。もうひとつのメリットはシステムが軽量なことです。
 電子式イモビライザーが標準装備されており、毎回モーターサイクルのキー(トランスポンダー)とモーターサイクルのオンボード電子システム間で暗号化されたデータをやり取りします。これは現在のところイモビライザーとしては最適かつ最も確実なテクノロジーです。
 メーター・パネルも重要な役割を果たしており、タコメータは装備されていません。これはオフロード・ライダーがほとんど、スピードメーターと情報を表示するフラットスクリーンで用が足りているためです。
 メーター・パネルの機能と構成は、R1200GSから流用しました。追加の表示機能として、ライダーは現在までの走行時間を呼び出すことができます。この時間は、特にオフロードの埃っぽいコースを走行する場合、エア・フィルターの交換時期を知るために重要です。

●デザインおよびボディ
 HP2 ENDURO のデザインはあくまで最高にピュア。デザインは、各構成部品に与えられた機能を十分引き出すよう、細部まで考え抜かれています。
 徹底的な軽量化こそ、新型マシンのスタイリングにおける重要なポイントでした。そのため、タンク・カバーとマッドガードの一部のみが塗装されています。
 タンクの側面部品やフロント・マッドガードなど、露出部分に使用されるプラスチック部品は、転倒時のダメージを考慮して、色付きのザラザラしたプラスチック製(塗装不要)になりました。つまり、傷が付いても実際には見えないため目立ちません。
 HP2 ENDURO のボディ・カラーは、インディゴ・ブルー・メタリック/ アラスカ・グレーです。
 ヘッドライト・マウントは、ニュー・マシンのオールラウンド性能の高さを示す好例です。極めて強く安定しているヘッドライト・サポートは、従来通りの位置でサルベージ・バーとしても機能します。シート後部下の持ち上げ用のくぼみは、リア・ホィールが巻き上げる泥の影響を受けない位置にあります。
 ナンバープレート・サポートと方向指示器はボルト5個で固定され、ケーブルもコネクター接続のため、オフロード走行時には簡単に取り外しができます。

●オフロード向け保護装置
 HP2 ENDURO には、マシンに後付可能な保護用品の特別パッケージが標準装備されています。この保護パッケージは以下通りです。
・ ハンド・プロテクター:オープン構造になっており、転倒時の負傷を可能な限り少なくします。
・ 超大型プラスチック製エンジン・プロテクター:転倒時にシリンダーやスロットル・バルブ、マニフォールドなどの損傷を防ぐのに役立ちます。
・ 透明プラスチック・カバー:ヘッドライト前面に取り付け、悪路での飛び石からヘッドライトを保護します。この保護カバーは公道では使用できません。
・ リア・アクスル・プロテクター:ファイナル・ドライブ・ハウジング下の面が衝撃を受けたときに、ハウジングの損傷を防止します。
・ 通称「ブレーキ・スネーク」:小型のスチール製ロープで、ブレーキ・ペダルの周囲に巻いて、石、木の枝などがフットブレーキ・レバーとエンジンの間に挟まらないようにし、レバーの変形、固着、誤操作を防止し、意図しないブレーキ作動を防ぎます。


■装備範囲

●オプション装備品とアクセサリー
 ニューHP2 ENDURO モーターサイクルの導入時には、工場装着オプションは用意されていません。ただし、カスタマイズ用に顧客自身やBMW Motorrad 正規ディーラーで後付け可能な数多くのアクセサリーが用意されます。これにより、オーナーはいつでもモーターサイクルの機能や装備を拡張できます。

●特別装備品
・ ロー・ダウン・ライダー・シート(シート高900mm)
・ アセンブリー・スタンド
・ グリップ・ヒーター
・ ホワイト・ターン・インジケーター・インジケーター・カバー
・ エンデューロ・リア・バッグ
・ エンデューロ・タンクバッグ
・ ハンドルバーのインパクト・プロテクター
・ タイア・ホルダー
・ バルブ・カバーの漏れ修理用エマージェンシー・キット
・ BMW Motorrad 製ナビゲーターII 用サポート/接続ケーブル
・ BMW Motorrad 製ナビゲーターII(ナビゲーションシステム)


■HP2 ENDURO 主要諸元
●Power unit
Capacity cc 1,170
Bore/stroke mm 101/73
Max output kW/bhp 77/105
 at rpm 7,000
Max torque Nm/lb-ft 115/85
 at rpm 5,500
Engine configuration Boxer (flat-twin)
No of cylinders 2
Compression ratio/fuel grade 11.0/premium plus
Valves/gas management HC (high camshaft)
Valves per cylinder 4
Intake/outlet dia mm 36/31
Throttle butterfly diameter mm 47
Fuel management BMS-K

●Electrical System
Alternator W 600
Battery V/Ah 12/12 maintenance-free
Headlight W H4
Starter kW 1.1

●Power Transmission/Gearbox
Clutch Single-plate dry clutch, dia 180 mm/7.1"
Gearbox Dog-type six-speed gearbox
Primary transmission ratio 1.823
Gear ratios
1=2.277
2=1.583
3=1.259
4=1.033
5=0.903
6=0.805
Rear-wheel drive Driveshaft
Final drive ratio 2.82

●Running Gear and Suspension
Type of frame:Steel tubular spaceframe, non-load-bearing engine
Wheel guidance, front:UPSD fork, dia 45mm
Wheel guidance, rear:BMW Paralever
Spring travel, front/rear mm 270/250
Camber mm Normal set-up 127
Wheelbase mm Normal set-up 1,610
Handlebar head angle ° Normal set-up 60.5
Brakes front Single-disc brake, dia 305mm
    rear Single-disc brake, dia 265mm
    No ABS
Wheels Cross-spoke wheels
    front 1.85x21
    rear 2.5x17
Tyres  front 90/90-21 M/C 54Q M+S TL, MCE Karoo 2 (T)
    rear 140/80-17 M/C 69Q M+S TL, MCE Karoo (T)

●Dimensions and Weight
Length, overall mm 2,350
Width, overall, with mirrors mm 880
Handlebar width, w/o mirrors mm 828
Seat height mm 920
Weight, unladen, with full tank kg 196.5
Max permissible kg 380
Tank capacity ltr 13

●Performance Data
Fuel consumption
90km/h ltr/100km 4.1
120km/h ltr/100km 5.5

Acceleration
0-100km/h 3.2sec
Standing start km 22.3sec
Top speed 200km/h

<以上>