☆2005年型BMW HP2 ENDURO販売開始

 BMWジャパンは2005年10月19日、新機種である“HP2エンデューロ”の日本市場投入を正式発表した。11月1日から全国の正規代理店にて予約を受け付ける。
 そのハードウエアの内容にしろ受注生産という販売形態にしろ、非常に特異なモデルであるわりに、希望小売価格2,415,000円は安いように思える。


 このモデルに関してはかなり以前より情報が散発的に流れた。そして7月半ばあたりから、一部専門誌には試乗記すら掲載されている。おそらく量産試作車(あるいはもう少し手前の生産試作車)の段階のものを報道関係者に試乗させたのだろう。それはこの世界、よくある話であり、実際に販売されるものとは若干異なっている場合もあるのだが、それはそれでよい。
 しかしながら、少なくとも日本で報道されたものは、どうもこのバイクをうまく表現しているとは思えない。ビッグオフローダーを心の底から好きな人々の視点に立ったものとは思えないのだ。
 ビッグオフといっても、その使い方にしろモデルのキャラクターにしろ、いろいろある。ほとんど舗装路での使用を前提とした純ツアラー、オフも少しは走るアクティブツアラー、あえてこうした大型車でのオフロードアタックを主題(少なくとも心の中の)にするもの……。とくにこのHP2は、かなり例外的にコンペティティブな方向である。ではあるが、単純な競技車両を評価するような物差しで語られても、それは違うだろっ、という気持ちになる。
 千変万化の大地を縦横無尽に駆けまわる、そのダイナミックな冒険の魅力や、そこへの憧れを投影する対象としての価値。そこに夢中になって、お金を出してバイクを買う人々の気持ちに立ったレポートは、残念ながら僕はまだ見ていない。
 そこで、日本市場投入の宣言がなされたこのタイミングに、BMWジャパンのリリースをここに掲載することにした。作る側、売る側のアピールではあるが、僕はそこに、雑誌記事よりも濃い(=熱烈な)メッセージを感じ、読んで楽しいエンターテイメントでもあると思った。
 まずは、この記事の冒頭の走り写真である。
 ビッグオフに乗った経験のある人なら分かると思うが、この手のバイクが最も不得意とする状況のひとつだ。助走速度を乗せられない、かなりの低速状態の深い溝の底から、その縁へと斜めに這い上がる場面である。さらに以下のごとく……。



 メーカーが用意したプレスキットの写真群では、こうした走行シーンが初めのほうに山ほど続く。フラットダートを豪快にブッ飛ばすシーンもなくなはいが、多くはない。このバイクの特徴、一般的なビッグオフ車に勝る部分を主張しているのだと僕は感じた。また舗装路の走行シーンも結構ある。リリースを読んでいくと、アウトバーンでの全開連続走行テストもかなりやったようだ。
 オフ走行機能に特化したモデルとはいえ、広大なデザートで砂塵を巻き上げ豪快走行(こうしたバイクでそれが気持ちいいのは当たり前)といったことに限らず、トライアルまがいの場面から派手なジャンプ、舗装路全開も。それこそ「地球を遊ぶ」ビッグオフならではの世界であろう。というか、BMWらしい。
 そして、ハードウエアの解説。
 R1200GSベースとはいうものの、その車重はガソリン満タンの走行状態で200kgを切り、乾燥車重ではわずか175kgでしかない。エンジンからはバランサーを取っ払い、スイングアームはアルミ鍛造パーツの溶接組立構造、フロントブレーキはシングルディスクでキャリパーはピンスライド式、前輪は21インチのクロススポークホイール+専用開発チューブレスタイヤ……。
 極めつけは、同社ご自慢のテレレバーを取っ払った鋼管スペースフレームの採用だ。あれだけ各車に採用し、世界で最も優れたサスだと謳っている方式を、このモデルは別、と捨て去って普通の倒立フォーク(ダンパー構造やインナーチューブのコーティング処理などは特殊)にしてしまうことなど、日本メーカーには逆立ちしてもできない芸当(誉めているのか呆れているのか???)である。
 テレレバー方式は、オンロードのスタビリティでは圧倒的な優位性を誇る。反面、オフでは第一に、フォークが前後にしなうことでの衝撃吸収=コンプライアンス機能がきわめて低く、ガレ場や凸凹の激しいオフ路面では不利である。また大径前輪の採用や、長大なサスストローク確保、大きなハンドル切れ角の確保といった面でも、苦しい。そんなことは作っている側が一番知っているのだが、こうして誰もが買える市販車として、そのテレレバーを取っ払ったバイクに自社のマークを付けて売ってしまうというのは、アッパレである。
 その作りや、通常の量産ラインには乗せられずBMWの工場の片隅で組み立てる生産方法からすれば安価とはいえ、気軽に買って転倒しまくりながら遊ぶというのは、なかなかできない値段である。またシート高は920mmもあり、何しろその車格とパフォーマンスは万人に使いこなせるものでもなかろう。だが、誰もが買えない、乗りこなせないバイクがあったっていいのだ。
 リリースを読んでいるだけでも楽しくなる。作り手が、本当にビッグオフで遊ぶのが好きで、どこが美点なのか欠点なのかを知り尽くしていることが伝わってくる。フラットツイン搭載車ならではのことだが、転倒時にヘッドカバーに穴をあけたときの修理キットまでが純正品として用意されていて、とっても笑える(僕は市販のエポキシ系接着剤を常時携行している)。
 ちなみに車名の「HP」はハイパフォーマンスの意であり、「2」はこのモデルの識別記号で2気筒Rシリーズの意味もある、とBMWは述べている。その名称から想像しがちな、BMW車のスペシャルマシンコンストラクターとして名高いHPNの関与はなくはないだろうが、その意味ではないということだ。そして「HPシリーズの第1号車としてこのモデルを……」といった解説もある。ということは、こうした特定の愛好者に向けた受注生産モデルを今後も販売する可能性がある、オンロード版も??? 期待していいのではないか。
 以下に、BMWジャパンより発表された10月19日付のリリースを、ほぼそのまま掲載する。
 また、より詳細な技術解説も掲載しておく。エンジン性能曲線などごく一部を省略したりしているものの、こちらもオフィシャルリリースをほぼそのままお伝えするものだ。かなり長文だが、こっちのほうがはるかに面白い。なお、このファイルの冒頭で『内容はEU市場向け(2005年4月現在)の仕様を基準とし……』とあるが、掲載する内容は、BMWジャパンが下記文面と同時に10月19日にアップしたプレスキットを元に製作している。日本での販売車両とは馬力や車重が若干異なるなどの違いはあるが、大した問題ではない。欧文の直訳的表現が読みにくいところもあるが、これまた翻訳者の意図からヘタに意訳されるより、原文執筆陣の気持ちがいろいろ想像できてすごく良いと思う。時間のあるときに、酒でも飲みながら熟読することをお勧めする。>>>詳細技術解説

*************以下BMWジャパンのリリース***********

2005年10月19日
世界最強の2気筒オフロード・バイク
ニューBMW HP2 エンデューロを発売


 ビー・エム・ダブリュー株式会社(本社:千葉市美浜区中瀬1-10-2、代表取締役:ヘスス・コルドバ)は、高性能を特徴とする、全く新しいモーターサイクル・ラインを新設します。ビッグ・エンデューロというカテゴリーを創設した記念すべき第一号モデルのR80G/S の誕生から25周年を迎えた今年、新世代の水平対向2 気筒エンジンに世界初の二輪車用エア・サスペンションを装備した、世界最強のピュア・オフロードバイクとなるニューBMW HP2 エンデューロを市場に投入し、BMW Motorrad の製品攻勢とブランド・コミュニケーションを加速させます。
 ニューBMW HP2 エンデューロのメーカー希望小売価格は2,415,000 円(消費税を含む、消費税以外の税金および登録諸費用を除く)で、2005年11月1日(火)より全国のBMW Motorrad 正規ディーラーにて受注を開始します。世界中で最も厳しい条件の道で最高の性能を出すべく、一切の妥協を廃したこのモデルの性格付けに鑑み、受注生産での販売となります。

■ニューBMW HP2 エンデューロの特徴
 究極のビッグ・オフロード・バイクと位置づけられるHP2エンデューロは、本質的なものへの回帰をコンセプトとし、一切の妥協を廃して、道なき道を自由に「駆けぬける歓び」を追求した、ビッグオフでありながら異例に軽量機敏なモーターサイクルです。
 HPは、ハイパフォーマンスの頭文字を表しています。この高性能シリーズの記念すべき第一号モデルとして、BMW Motorrad は、エンデューロを選びました。理由は、これこそ正統派のボクサー・エンジン・ファンの夢を叶えるものだったからです。このニューモデルは、少数の献身的なスペシャリスト集団により開発されました。参画したエンジニアやメカニックは、ボクサーに心底ほれ込んでいるのはもちろん、自らもオフロード・モータースポーツを楽しんでいる人達でした。そのため、このマシンの開発は「熱狂的なプロフェッショナルのみが、熱狂的なプロフェッショナルが本当に望むものを提供できる」という明快な発想のもと、通常の開発プロセスを度外視したかたちで開発が進められました。その結果、この極めて印象的なモデルが誕生しました。
 BMW HP2 エンデューロにはあらゆる面で、オフロード・アスリートを自認するライダーを魅了する設計が施されています。新設計の軽量倒立フロンフォーク、世界初となるリアのエア・スプリング/ダンパーシステム、そして、エンジン自体も最小重量になるよう最適化を図り、また低重心というボクサーのメリットをオフロードでフルに発揮できるよう、ドライブトレイン全体をレイアウトしました。この結果、このビッグツインの乾燥重量はわずか175kg、装備重量(ガソリン満タン走行可能状態)でも199kg と、200kg を下回る軽量を達成しました。この結果、HP2 エンデューロは、難易度が高いハードなテクニカル・コースにおいても、オフロードの高速走行セクションにおいても、優れたパフォーマンスと安定性を発揮します。一目見たら忘れられない強烈なスタイリングとあいまって、チャレンジを愛するライダーに究極のオフロード体験を約束します。


●R1200GSの搭載のエンジンをベースに、バランス・シャフトを外すなど、オフロード用に最適化すると共に、出力をわずかながら向上。最高出力105ps(77kW)/7,000rpmと最大トルク115Nm/5,500rpm を発生。
● リア・サスペンションには、二輪としては世界初となる、エア・スプリング/ダンパーシステムを採用。繊細なレスポンスと優れた耐衝撃性という相反する要件を同時に適えながらも、メインテナンスを全く必要とせず、調整も容易なこのシステムは、同時に総重量が2.3kgに満たず、従来の構造より約1.5kgも軽量化。サスペンション・ストロークは250mm。
●フロント・サスペンションには、サスペンション・ストロークが270mmの倒立式、ストローク応動式ダンピング機能付きテレスコピック・フォーク(チューブ径45mm)を装備。

■主要標準装備品
・ リカバリーバー
・ WADテレスコピックフォーク
・ 高さ調整式ブレーキペダル
・ エア・ダンパー式リア・サスペンション
・ プラスチック製シリンダープロテクター
・ タイヤリテーナー
・ 脱着式ライセンスプレートホルダー

■カラーバリエーション<車体カラー(シートカラー)>
・ インディゴ・ブルー・メタリック(ブルー/グレーのツートン)

■主なオプション装備(価格は全て消費税込み)
・ エンデューロタンクバック ¥52,500
・ エンデューロリヤバック ¥16,800
・ ハンドルバープロテクター ¥7,350
・ エマージェンシーバルブカバーキット ¥8,400
・ タイヤビートストッパー ¥3,990
・ ローシート(900mm)*ノーマルは920mm ¥52,500

■ニューBMW HP2 Enduro 主要諸元
エンジン型式 空油冷水平対向2 気筒
燃料供給・エンジン制御装置 電子制御式燃料噴射システム
  デジタルエンジンマネジメントシステム(BMS-K)
総排気量 1,169cc
ボア×ストローク 101x73mm
圧縮比 11.0
最高出力(ps/rpm) 105<77>/7,000
最大トルク(Nm/rpm) 115/5,500
クラッチ 乾式単板
ギヤボックス/駆動方式 常時噛合式6速/シャフトドライブ
全長(mm) 2,350
全幅(mm) 880
全高(mm) 1,260
シート高(mm) 920
車両重量(kg) 199
燃料タンク容量(L) 13.0<リザーブ4L含む>
燃料 無鉛プレミアムガソリン<最低オクタン価98>
サスペンション F=倒立式テレスコピックフォーク
  R=エア・ダンパーシステム
ブレーキ F=油圧式シングルディスク 直径305mm
  R=油圧式シングルディスク 直径265mm
ホイール F=1.85x21 R=2.50x17
タイヤ F=90/90-21 R=140/80-17
ギア比:
 1速 4.513
 2速 2.887
 3速 2.296
 4速 1.884
 5速 1.647
 6速 1.468
最終減速比 2.818
  *数値は国土交通省届出値

<以上>