☆トライアンフの2006年型モデル

 トライアンフジャパンより9月16日付で、2006年型の新機種3モデルが発表された。ロケットスリー・クラシック、デイトナ675、スクランブラーである。そのうち、デイトナ675とスクランブラーをここに紹介する。9月末あたりに、さらに詳しいデータや写真が公表される可能性があり、その場合は加筆する予定だ。


●デイトナ675トリプル

 ミドルクラスにおいて、同社が初めてデビューさせる3気筒モデルである。実車の初披露は10月1日から始まるパリショー。東京モーターショーでも見られるはずだ。

 そもそもミドルクラスとは何か。
 歴史的に見れば、そのバイクが搭載するエンジンの総排気量が500ccとされた時代は長かった。でも……いやいや400であろう、いや650だ、むしろ今となっては750も含まれよう……。このあたりは技術の進歩によって変わる部分もあるし、各国のレギュレーションにも影響され、数値を固定的に明示することは難しい。とはいえ、250ccではなかろうし、1000ccでないことも確かだ。
 かなり以前から600ccクラスは、公道スポーツにおけるベストバランスのカテゴリーだと言われてきた。確かにそうだと思う。絶対値と低中速の両方でのパワー、車体の重量とサイズ。公道でめいっぱいスポーツを楽しむのに十分以上の性能であり、精進すれば使い切ることもできる。あのホンダCBR900RRファイアーブレードの進化も、その理想バランスを基点にさらなる高みを目指すところから始まったのだった。
 ところが、いつのころからか様子がおかしくなってしまった。スーパースポーツ選手権を筆頭とする、欧州でのこのカテゴリーの市販車をベースと規定するレースで勝たないことには売り上げが伸びないからと、サーキットでのポテンシャル追求を基盤に日本メーカーがバイク作りをするようになったからだ。今や15000rpmまで回す超高回転高出力エンジンが主流となり、少なくとも日本の峠道では、ほとんど1速ギヤしか使えない。シャシーも高荷重を与えないと本来の面白みが発揮されず、命をかけてコーナーに突っ込むことを強要する---とは言い過ぎかもしれないが軽く流して楽しいかとなるとかなり怪しいものになってしまった。
 そんなおり、トライアンフから発表されたこのモデルは少々注目したい。
 欧州を主舞台に激戦区となった600ccのSSジャンルに、トライアンフも2003年(モデルイヤー)、4気筒のデイトナ600を送り込んだ。そのトータルバランスの優秀さは各方面で賞賛されたものの、絶対性能=サーキットのラップタイムということでは、やはり日本勢に対抗するのは難しかった。そこで2005年型として、レースレギュレーションから外れる650ccの排気量にスケールアップしたデイトナ650が投入される。
 こうした経緯が背景にあった上で、全面新作デイトナ675の登場である。どうせレース無視ならばトライアンフらしいバランスでの再構築を行おう。幅狭さを筆頭とした軽量コンパクトさでパワー特性でも抜群のトラクション性能を誇るなど、自慢の3気筒エンジンにしてしまったらいいじゃないか……と、おそらくそんな発想から作られたのであろう。
 いまだに一般ライダーが公道で使い切れるはずもない超高回転高出力の馬力競争を繰りひろげるニッポン量産会社の600、さらにはリッター。まあ、そういうモデルが存在しないバイク界など寂しすぎるし夢のバイク絶対に存在すべきとも思うが、世には現実の悦楽スポーツを待望しているライダーも少なくないはずだ。試乗できる日が楽しみである。
 以下に、トライアンフジャパンより発表されたデイトナ675のリリースを、ほぼそのまま紹介する。

*************以下トライアンフジャパンのリリース***********

■Daytona 675 Triple(デイトナ675)
 最も待ち望まれていたバイクの1台、3気筒エンジンを備えた2006年モデルのDaytona675は、大きなパワーとトルクを小さく俊敏なパッケージに詰め込み、ミドルウェイトスポーツバイクがどのような性能を持つべきか、ということを改めて定義しています。
 初めての3気筒ミドルウェイト、Daytona675は、無類のセンセーショナルなサウンドとフィーリングを持つ、孤高な存在となります。低速域での大きなトルクと中速域につながるパンチ力、そして爆発的なピークパワー。このバイクには、トリプルエンジン固有の特長が絶対的なものとなっています。
 力強く、トルク感溢れる、3気筒12バルブエンジンは、極めてコンパクトで幅の狭い設計で、スリムな車体を実現しています。さらに、確実な操作感を持つクロスレシオ6速ミッション、ケイヒン製の閉ループ燃料噴射システム、シートカウル下にサイレンサーをセットした低抵抗マフラーを特徴としています。
 Daytona675のエンジン周りの設計は、円形断面のアルミ製オープンバックフレームがエンジンを包み込み、3気筒エンジンの特長である幅の狭さをさらに強調するものとなっています。倒立フロントフォークとピギーバック付きリヤサスペンションはフルアジャスタブルタイプで、プリロードと伸び側/縮み側ダンピングが調整可能です。フロントブレーキには、ラジアルマスターシリンダーとフォーピストンラジアルキャリパーをダブルディスクに組み合わせました。新しいホイールは軽量ファイブスポークデザインとなっています。
 トライアンフはこのDaytona675で、所有していることをオーナーに飽きさせない、そして何よりもライディングを飽きさせないバイクを創り出すことに目標を置きました。エキサイティングでパワフルなエンジンと、直感的で俊敏なシャシーを備え、途方もない性能を発揮し、ルックスやサウンドも他に類を見ません。すべては完全に考え抜かれたもので、全体のコンセプトを表すひとつの言葉、「無比無類」を追求した結果です。
 本当の意味で「殻を破った」モーターサイクルはわずかしかありません。しかし、Daytona675は間違いなくそのひとつです。
<以上>

●スクランブラー

 空冷DOHC並列2気筒エンジンを搭載する現行ボンネビル系をベースに、主に外装関係を調整したバリエーションモデルである。それは誰の目にも明らかだが、こいつのスタイルは、意外と人々の注目を集める力を発揮するかもしれない。
 イメージ的には、旧世代トライアンフが生んだ大昔のタイガーあたりをヒントにしているのだろう。現行車でも、重い3気筒水冷エンジンを搭載した”タイガー”はあるが、機能云々ではなく、こちらのほうが昔のタイガーっぽいイメージが漂う気がする。

 そもそもスクランブラーとは何か。
 トライアンフの1モデルに与えられた固有名詞ではなく、一般名称としてのスクランブラーという言葉は、若いライダー諸氏にはピンとこないかもしれない。しかし、だからそこ新鮮に見えるとも思う。そこがまさにトライアンフのねらいであろう。僕の場合は、新鮮さより懐かしさがこみ上げてくるのだけれども。
 1968年に免許を取得、という僕のバイク乗り始め時期は、バイク界がまだ旧世代の様相を色濃く残していた。2ストローク単気筒で前後サスペンションのストロークが長い、そんな本格的オフロード車がちらほら現れ始めるかな、という時期である。これより以前は、まあ概して言って、オフロード専用車という特化したジャンルなしにバイクは進化してきていた。より速く=オンロードでの最高速や加速力を高める、みたいな方向だ。その、オンロード走行機能を基盤に作られたバイクに、オフっぽい機能を追加した改造車みたいなものがスクランブラーである。
 オフ機能といっても、ロードクリアランスを大きくするためマフラーとエキパイを高く配置し、ハンドルも幅が広めのアップタイプに変更して、ブロックパターンのタイヤを装着、といった程度である。車重は重いし、サスペンションのストロークはそれほど大きいわけではなく、ホイールアライメント関係もオフに特化したものではない。
 スクランブラーの仕様はそんなものだから、オフロード走破性など知れたものである。知れたものではあるが、ほとんどのライダーたちは本物オフ専用車の走破性など未経験で、スクランブラーで十分に楽しんでいた。オフロードを攻め込んでいたというより、ほとんどは単純な未舗装路を走っていた程度とすべきかも。そういう道がまだ多かった時代で、砂利道国道などを走行するにはスクランブラーで用が足りた。
 といった機能なんかよりもはるかに重要なのは、ルックスであった。改造車的な外観のワイルドさは、道がある限りどこまでも走って行けるという夢を持たせてくれるし、何より迫力があってハッタリも効く。やがて登場し始めるスリムで軽量な本格オフ車もワイルドではあるが、文字で表現すればスクランブラーはもっと『野性的』というか、むしろ『野蛮的』ですらあり、それが魅力だった。
 スクランブラーにそうした価値や魅力を見いだすバイク乗りは多数派ではなかったが、確実にいたことも確かだ。振り返ると、僕もそのひとりだったようである。
 僕の初バイクはホンダCB92という2気筒125cc(の中古車というよりも大古車)で、これはもちろん思い出深い。が、本格的にバイクの世界を知ったのは、18歳で手に入れた2台めのマイバイク、ホンダCL72(空冷SOHC2気筒250cc)だった。
 72系はホンダの、そして日本の本格的スーパースポーツ時代を創造した騎手であり、1960年デビューのCB72が基点。CLはそのスクランブラー仕様だ。僕がCL72を手に入れた1970年はすでにCB250の時代で、こいつもまたCB92同様に中古とうより大古車に属していた。が、とにかく何より、その格好良さに一目惚れした。クロスアップのエキパイが、マフラーとして膨らむことなくストレートに後方へ伸びる姿。小振りなタンクと、それによってエンジンの立派さが強調される姿。恋は盲目、我慢など無理。いてもたってもいられず友人から友人への人づてで探してもらい、なんとか安価で手に入れたのだった。
 なお、上の写真は1998年9月17日、ホンダのCL400プレス発表会でのもの。会場には、撮影用にCL72の完全レストア車が用意されていたのだった。
 さて、CL72を入手した小僧の僕は、オフ走行に励もうなどという気持ちは微塵もなし。カッコ第一である。とはいえ、その容姿が僕をもっと走りまわれと誘ったのか、それまでは行動範囲が半径15km程度だったのが、半径1500km以上へと広がっていった。あちこち走りまわり、様々なトラブルに遭い、いろいろな道/風景/走りの世界/人々に出会った。僕のバイク人生の基盤はこのころ、できたのかもしれない。
 というような想い出を、06年型トライアンフ・スクランブラーに映し出す人はほとんどいないだろう。しかし、先入観念まったくなしで、このバイクのルックスに惹かれる人はそれなりにいると想像する。今の時代だからこそ、なおのことスクランブラーの容姿が引き立つかもしれない。走行機能に高度なものは期待しにくいが、既存のボンネビル系と同等であればそれで十分だ。いかにもアナログ的なバーチカルツインの回転フィールなど、乗り味としてお似合いであろう。
 以下に、トライアンフジャパンより発表されたスクランブラーのリリースを、ほぼそのまま紹介する。

*************以下トライアンフジャパンのリリース***********

■Scrambler (スクランブラー)
 2気筒エンジンを搭載したScramblerは、モダンクラシックシリーズの新しい方向性を示します。トライアンフの歴史に対する新たな見解となるScramblerは、スティーブ・マックイーンをはじめとする50年代のスリルシーカーたちによって知名度を高めたバイクを、現代の都会的な風景の中にもう一度作り直したマシンです。
 Scramblerは、明るいカリフォルニアの落ち着いた文化や、ヨーロッパ南部のスクーターマニアたちが持つスタイリッシュさからイメージされた、“何でもこなす、どこへでも行ける”という雰囲気を持ったバイクで、現在のマーケットに満足していない、特定のライダー層をターゲットとして開発されました。
 このようなライダーたちの統計数やライディング経験は多種多様ですが、彼らは皆、モーターサイクルは社会的に認められた素晴らしい楽しみであり、解放感を得ることができるものだと考えています。
 ただし、決定的なのは、彼らは速く走ることに関心はなく、性能やその他の比較数字に惹かれることはありません。結果、このようなライダーたちは、タンデムライダーを乗せるときもそうでないときも、街中から郊外、滑らかな路面でも荒れた路面でも、また長距離走行においても、威圧感のない、気軽にまたがることのできるバイクを求めています。さらに、バイクに乗る仲間たちにも乗らない仲間たちにもアピールするものがあり、理解される、特徴的で個性的な主張を持ったデザインであることが望まれます。Scramblerはまさにそういったマシンです。
 唯一無二であることを主張することができるモーターサイクルはほんのわずかしかありません。しかし、Scramblerは、フラットなシートや小さなヘッドライト、ゴツゴツとしたタイヤパターン、アップタイプマフラーといった、オーセンティックなスタイリングにより、間違いなくそのようなバイクの1台と言えます。このようなマシンを正式なモデルとして創り出し、モーターサイクルのまったく新しいニッチを生み出すことができるのは、ブランド力と歴史観を持つトライアンフだけかも知れません。

<以上>