☆2005年型トライアンフ・スプリントST発表


 トライアンフジャパンは3月10日、2005年モデルのスプリントSTを発表した。このモデルは昨年すでに、プロト車の写真や概要が発表されていたものの、今回は芝浦でのプレスミーティングにおいての実車披露であり、またリリース内容も一部修正を加えつつ、より詳細なものとなっている。
 新生トライアンフ発足と同時にデビューした「スプリント900」以来、同社のこのシリーズは、目立たないけれども誠実で優秀なモーターサイクルであり続けていると思う。その内容は、名称の「スプリント」から想像しがちな単純性能指向ではない。華々しく高性能を謳うようなパーツで飾り立てられてはいないが、あらゆるシーンで乗りやすく、公道スポーツを存分に楽しめ、そして同時に旅の道具としても優れる。そんな体質が継承され続けているのだ。
 同社は現在、2気筒のボンネビルなど日本市場でウケをねらうモダンクラシック系モデルをヒットさせたり、量販市販車では最大排気量の2294ccを誇るロケットスリーを放つなど、自己の存在を強烈に主張する活動を繰り広げている。それはそれでよい。しかし僕は、現在のトライアンフの本当の意味での中核モデルは、デイトナ955iや、このスポーツツアラーに属するスプリントSTだと思う。いかに目立つかよりも、彼らが理想とするモーターサイクルの具現化に力が注がれているように思うからだ。
 スプリントは1998年、アルミフレームを備えるSTへと進化した。以後、02年に若干の仕様変更を受けているが、基本的にはそのままの形で現在に至っている。それが今回、スタイルに限らず全身に大幅な改良を受けた。
 今回のプレスミーティングでは、展示に限られており試乗はできなかったが、6.4mmのストロークアップにより総排気量を955ccから1050ccに増したエンジンを始動することはできた。スナッピングしてみた感じでは、かなり期待できそうである。同社の並列3気筒らしい、シャープさと柔らかさが同居した回転フィールは確実に継承されつつ、さらに緻密で滑らかになったという感触であった。言うまでもなく、全回転域でトルクアップしている。
 新作フレームは、ホイールベースを従来型の1475mmから1457mmへと短縮している。キャスター&トレールも25度/92mm→24度/90mmに変更された。数字で見る限りは、スポーツツアラーとしては運動性寄りかな? というものだが実際のところは乗ってみなければ分からない。しなやかで素直なスプリント系の操縦性をどのように継承し発展させているのであろうか?
 排気量増大に関連してか、車重は増加しているが、その増加幅は3kgと小さく乾燥車重は210kgである。ガソリンタンク容量は1.5L増しの21Lとなった。車両価格の増加は1,312,500円→1,333,500円(税込み)と小幅である。日本市場への投入は4月中旬が予定されている。
 純正パニアケースに始まる各種オプション装備も当然のように用意されている。GPSもあるが、これが日本語地図対応か否かについては確認する必要がある。もっとも、そのベースはすでにホンダがフォルツァ用として発表したものと同じガーミン製であり、ホンダ製品を取り付けてしまう手もあろう。
 とにかく。
 スタイリング的には多少とも「新しさ」を表現しようとする意図が感じられるが、華美になりすぎないような気配りがあり嫌みはない。センターアップ型のマフラーレイアウトは、外観の新鮮さのみならず、パニアケースの装着しやすさを考慮してのものであろう。このあたりは、好敵手であるホンダVFRと同じ手法だ。公道スポーツバイクの王道を歩むスプリントSTには大いに期待が高まるところで、ここで取り上げることにした。以下に、トライアンフジャパンのリリースをほぼそのまま掲載する。
 なお、オプション類や主要諸元に関しては、同社のオフィシャルwebサイトをご参照いただきたい。また、同様の1050ccエンジンを搭載するNKモデル(同社はストリートファイターと称する)についても、同サイドに概略がある。

*************以下トライアンフジャパンのリリース***********

■はじめに

 スプリントSTは、一切の妥協を許さないモーターサイクルであり、あらゆる妥協を拒んできた。長距離走行が可能なスポーツバイクであると同時に、コーナーを攻めることのできるツーリングバイクでもある。落ち着きと力強さ、そしてオールラウンドな実用性を、実際に活用できるレベルで合わせ持っている。この素晴らしい能力は単なる偶然ではない。トライアンフは何年も前からバランスの良いモーターサイクルを生み出す方程式を獲得しており、スプリントSTはその多才な能力を楽しむライダーたちにとって非常に満足なマシンであることが証明されてきた。多才という言葉は常にスプリントSTのキーとなる長所である。他のバイクにはない懐の深さを持ったマシンなのだ。
 1998年の発表以来、スプリントSTはスポーツツーリング部門の最高峰以上のものとしてプレスに評価され、トライアンフが販売されているほとんどすべての国でトップセラーとなっている。あらゆる年齢層のライダーにとって全面的な魅力を備えたモーターサイクルであると証明され、2002年にエンジンのグレードアップを受けて高圧鋳造クランクケースが採用されたこと以外大きな変更はなかった。スプリントSTは素晴らしい総合性能を持つバイクとして、淡々と存在を主張してきたのである。
 ところが、時代は移り変わり、2005年に向けてスプリントSTはホイールのレベルから新しく設計しなおされた。大規模な改善プロセスによって、あらゆるパーツは吟味され、変更された。トライアンフにとっての新型スプリントSTのキーは、マシンを最新のレベルまで高めながら、長期間にわたって素晴らしいものであり続けるということであった。エンジニアはリアルスポーツのスペックを備えたマシンの製作に努めながらも、旧モデルが持つ長距離走行でも疲れない快適なシート/ステップ、ハンドルバーのエルゴノミクスについても大切にした。
 スタイリングも非常に重要である。トライアンフが望んだのは、型破りでありながらも従来モデルのエッセンスとトライアンフファミリーのフィーリングを残した、個性的でスタイリッシュなマシンを作り出すことであった。スプリントSTのオーナーは情熱的で誠実なライダーが多く、新型にはスプリントSTの系譜と先代の面影を持たせる必要があった。フロントまわりのフェアリングやサイドベントの形状を見ていただきたい。そこには、従来型スプリントSTを思わせる部分がある。

■スタイリング

 スプリントSTのデザイナーに対する初期のスタイリングブリーフは、その品質と本質にふさわしい、控えめで微妙なエレガンスさに固執したもので、基本的にはアストンマーチンが持つグランドツアラー(GT)のフィーリングをバイクに与えたようなものであった。スプリントSTの性質と魅力のキーとなるもの、またこのバイクを他と違う存在にするものは、常にその3気筒エンジンであった。
 この「トリプル」というテーマは、デザイナーが最初にペンを動かした瞬間から、新しいスプリントSTの独特なスタイルに不可欠な要素となっていた。3灯式プロジェクターヘッドライトはこのバイクの強靭な心臓部を強調する存在であり、他にはないルックスを作り出している。両外側のライトはロービーム、中央のライトはハイビームである。
 同じテーマを用いて、メーターパネルは3つの独立メーターを特徴としている。さらにリヤシートの下に見えるサイレンサーも3本で、LEDテールランプユニットとともに美しいリヤビューを作り出している。
 しかし、スプリントSTは多くの場合、長距離を走るために使用されるモーターサイクルであるので、すべての曲線や角は見栄えが良いだけのものであってはならない。まずなによりも実用性を備えている必要がある。それゆえ、スプリントSTのデザイナーとエンジニアは、美しくありながらも総合的には多機能なマシンを生み出すために、以前にも増して形状と機能を両立させる必要があった。ディティールも非常に重要で、たとえば、ホイールのスポークと同じデザインをステップのヒールプレートにも使用したり、フロントのヘッドライトべゼルの形状をメーターパネルのまわりにあしらったりする手法が用いられた。
 スプリントSTの新しいキャラクターのほとんどは、このようなタッチに表れている。また、何層にも重ねられたディティールワークが、統一感のある美しいルックスを作り出している。スプリントSTの滑らかなスタイルは、機能的かつゴージャスであり、クロームのインフィルバーやミラーにセットされたフロントウインカーなど、あらゆる部分に巧妙なデザインを与えることによって、高級感が与えられている。
 しかし、デザインワークは独自に行われたわけではない。市場調査グループによって、スポーツツアラーの使われ方やユーザーが望む特性が追及され、提案されたデザインや機能に対するユーザーの反応がリサーチされた。スプリントSTの圧倒的に斬新で躍動感のあるラインと個性的なキャラクターは、その印象的なパフォーマンスパラメーターと同様、称賛を勝ち獲っているのである。

■エンジン

 スプリントSTのすばらしい実用性は、大部分がその由緒ある3気筒パワープラントにある。もともとこのエンジンは、どのギヤでも瞬発力のある滑らかなレスポンスを発揮する。新しいスプリントSTの1050 ccインジェクショントリプルは、すべての面でさらなる進歩を遂げた。より大きなトルクでギヤを選ばない気楽なクルージングを実現し、必要なときにはさらに力強くなったパワーを発揮する。ピークパワーは感動的な125 PS/9250 rpm、ピークトルクは104 Nm/5000 rpmである。だが、この3気筒エンジンがスプリントSTとそのキャラクターに与えたものは、トルクとパワーだけではない。このエンジンは、常にスプリントSTを他とは一線を画したマシンとし、その特別性を作り出す役割の大部分を担っている。
 より大きくなった新しいエンジンの排気量は、6.4 mm延長されたストロークによって達成された。このストロークの延長には、まったく新しいクランクシャフトが必要となった。ボアxストロークは79×71.4 mmとなり、圧縮比は12.0:1である。クランクケース、シリンダーヘッド、バルブタイミング、ピストンも新設計のものが採用され、わずかなストロークの変更によって、全体的にはより良好な吸排気を行う効率の良いエンジンが実現した。もちろん、排気量の増加によってもたらされるパフォーマンスの向上により、新しいエンジンは6000 rpmで大きく盛り上がる息を呑む加速とスポーティーなフィーリングを生み出し、トルクカーブはどの回転数でもさらに力強いものとなった。
 マルチポイント式シーケンシャルフューエルインジェクションのECM(エレクトリックコントロールモジュール)はケーヒン製で、このハードウェアおよびソフトウェアはモーターサイクルでの使用のために専用に設計されたものである。センサーからECMに情報が送られ、極めて素早い処理でエンジンパフォーマンスを最適化する。スプリントSTのエンジンはEuro 2に適合しており、ヘッダーパイプにある効率の良いプレ触媒と、サイレンサー内部のメイン触媒を使用して、排気ガスの清浄化を行っている。
 3気筒レイアウトの特徴はそのまま残されているが、このエンジンは、絞り出される強烈なパワーとはまったく対称を成すシームレスな上質さを持っている。トライアンフのエンジニアが常に重点を置いているのは、扱いやすさとスムーズなパワー伝達である。滑らかな操作性を持つ新しい6速ギヤボックスとリモート式チェンジリンケージ、さらにノイズと振動を大幅に減少させるバックラッシュ低減ギヤを採用したクラッチによって、このエンジンはより洗練されたものとなっている。クラッチ自体は、増大したパワーとトルクに対応しているにもかかわらず、操作のかなり軽いものとなった。

■シャシー

 スプリントSTの滑らかなエンジンに組み合わされているのは、卓越した性能のシャシーである。1457 mmのホイールベースを持つ新設計のアルミビームフレームと片持ちリヤスイングアームは、驚異的な安定感を持ちながらもクイックなステアリングを実現し、このバイクの性能範囲をさらに広げている。キャスター/トレールは24°/90 mm、シート高は805 mm。高品質なφ43 mmカートリッジ式テレスコピックフロントフォークはスプリングプリロードが調整可能で、新設計の減衰力特性とスプリングレートによって低速での路面追従性を損なうことなく高速コントロール性をさらに高めている。ニューデザインのボトム部もフロントフォークの特徴で、新しいボディワーク全体の洗練されたラインにマッチしたものとなっている。同様にリヤショックもリファインされ、スプリングプリロードと伸び側減衰力が調整可能である。
 フロントのφ320 mmフローティングダブルディスクに組み合わされた4ピストンブレーキキャリパーが素晴らしいストッピングパワーを発揮する。リヤは2ピストンキャリパーとφ255 mmディスクの組み合わせである。スプリントSTにはトライアンフのバイクとして初めてのABSがオプションで用意されている(日本市場では2006年モデルより導入予定)。組み込まれるシステムはニッシンがトライアンフ専用に設計したもので、フロントとリヤのキャリパーに独立して作動する2チャンネルABSである。この高度に洗練されたスプリントSTのABSは、ほとんどすべての状況で確実に安全マージンを生み出し、このバイクの新しいシャシー性能を最大限に活かした驚異的な制動力を簡単に発揮することができる。
 新型スプリントSTのハンドリングパラメーターを開発する上で、トライアンフのエンジニアは従来モデルのオールラウンドな性質をベースにしながら、高速域でのより張りつめた高い安定感を与えた。鋭く正確なステアリングと素晴らしいサスペンションコントロールによって、スポーツポテンシャルが大きく高められ、スプリントSTは低速域の扱いやすさを妥協することなくスポーツツアラーのカテゴリーにおける最先端のスポーツバイクに仕立て上げられた。
 新しいファイブスポークアルミホイールはフロント17×3.5、リヤ17×5.5のサイズで、組み合わされるタイヤはフロント120/70ZR17、リヤ180/55ZR17である。スプリントSTの乾燥重量は210 kg、タンク容量は実用的な21リッターとなっている。
 アナログ式のスピードメーターとタコメーターはともに視認性が良好で、スプリントSTから滲み出るGTフィーリングにふさわしいものである。水温計と燃料計、最高速度と平均速度の表示機能、走行時間、平均燃費と瞬間燃費の各表示、そしてもちろん時計も内蔵される。
 カラーはアルミニウムシルバーとカスピアンブルーの2色が用意され、ともにスプリントSTの控えめな洗練度の高さを際立てるものである。センタースタンドとタンデムグラブレールは標準で装備される。

■カスタマイズ

 従来どおり、トライアンフではスプリントSTのオーナーに対してこのバイクの使用状況とオーナーのキャラクターを反映するカスタムパーツを用意している。スプリントSTのカスタムパーツには、長距離の実用性を向上させるものと、スポーツ性やフィーリングを高めるものがある。
 新しいカラーリングに完全にマッチする、スプリントST専用にデザインされた完全防水のハードラゲッジケースとトップボックス。このシステムはひとつのキー操作ですべてをロックすることができる。ラゲッジ用の固定器具一式も含まれている。一方、簡単なラゲッジスペースとしては、専用のソフトパニアバッグでバイクの実用性を高めることができる。ラグジュアリーなゲルシートも用意される。
 ほかには、エアロスクリーンやグリップヒーターもある。エキゾーストシステム(公道使用不可)はボルトオンタイプで、3気筒エンジンの咆哮を解き放つことができる。
 さらに、スプリントSTにはトライアンフ多言語GPSシステムも用意されている。トップブリッジの上に取り付けるこのユニットはバイクのワイヤハーネスに直接プラグ接続することができ、自動車に持ち込むことも可能である。オプションでヘルメット用イヤホンとセットも販売される。
 本質的に、スプリントSTは常に由緒ある実用的なモーターサイクルであり続けている。その多様性よりもはるかに多い機会で、たくさんのライダーにすべてをこなすバイクとして扱われている。新しいスプリントSTでは、トライアンフがライダーの望んでいるものを懸命にリサーチし、その要望に応えた。ユーザーのために作ったバイクがユーザーに愛されるということは、とても素晴らしい。ユーザーが望んでいる以上のものを作ることができれば、もっと素晴らしいことである。
 血統は進化によって高められる。まさにその通りである。スプリントSTはそのことを証明している。そしてさらにそれ以上のことも。

<以上>